研究課題/領域番号 |
25350542
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 神奈川歯科大学 |
研究代表者 |
高垣 裕子 神奈川歯科大学, 歯学研究科(研究院), 教授 (60050689)
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研究分担者 |
田中 隆博 神奈川歯科大学, 歯学部, 研究員 (90550830)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 顎骨壊死 / 低出力超音波パルス / 骨細胞分化 / インテグリン / ビスフォスフォネート / メカニカルストレス |
研究概要 |
本研究では、α5β1 インテグリンが特異的に細菌に対するゲートキーパーの役割を持つ可能性を報告した顎骨骨芽細胞の実験結果(Watabe et al., Exp Cell Res, 317:2642-2649, 2011)を動物組織に適用し,社会的にも問題になっているビスフォスフォネート誘発性の顎骨壊死を低出力超音波パルス(以下LIPUS) による力学的刺激が防止できる可能性を検証することを目的とした。同時に,骨組織が遭遇するする様々な力学的刺激の受容において,骨芽細胞を標的とするLIPUS刺激と,骨細胞(オステオサイト)を標的とする伸展刺激を使い分ける機能が,骨芽細胞の骨細胞への分化に伴って変化するインテグリンのサブユニットにより調節されているという独自の作業仮説の正当性をも検証することとした。 当初加齢マウス(~7 か月齢)の頭蓋・下顎骨・下肢骨よりそれぞれ段階的コラゲナーゼ処理と4 mMEGTA処理により調製した骨芽細胞と幼若骨細胞・骨細胞において,骨細胞への分化に伴ってインテグリンが変化することの検証,インテグリンのサブユニットがLIPUS 刺激と伸展刺激を使い分ける機能の解析を優先する予定であったが、2番目に予定していた顎骨壊死モデルの確立 (組織学・骨質・強度の観点から解析し,骨細胞死,骨質・強度の劣化が見られるかどうかを確認する)と,合わせて,LIPUS 照射の病変に及ぼす効果を検討することを先行させた。 25 年度に得られた結果からは,本モデルラットの顎骨壊死モデルとしての妥当性と,上皮病変の創傷治癒・骨組織の再生が ビスフォスフォネート(アレンドロネート)存在下では遅滞し,それらがLIPUS照射により防がれるばかりでなく,LIPUS照射が液性の変化を伴って全身性に細胞分化誘導能等を上昇させることが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初加齢マウス(~7 か月齢)の頭蓋・下顎骨・下肢骨よりそれぞれ段階的コラゲナーゼ/4 mMEGTA処理により調製した骨芽細胞と幼若骨細胞・骨細胞において,骨細胞への分化に伴って発現されるインテグリンの変化することがインテグリンのサブユニットがLIPUS 刺激と伸展刺激を使い分ける機能の裏付けになっていることを優先的に解析をする予定であったが,2番目に予定していた顎骨壊死モデルの確立が急を要するため(関連の研究が欧米において進展している状況),そちらを先行させた。LIPUS 照射が細菌の存在下アレンドロネートにより生ずる病変を防止できることが明らかになった上,顎骨局部へのLIPUS 照射が液性の変化を伴って全身性に働くことが示せたので,重要度が高いと判断したためである。 前出のインテグリンサブユニットに関する研究は,研究協力者Harrison・連携研究者森下との共同研究にて進行中である。
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今後の研究の推進方策 |
前倒しで行った顎骨壊死モデルの最終的な確立とLIPUS 照射の病変に及ぼす効果のメカニズムの解析は,引き続き計画通り行う。 当初25年度に予定した加齢マウス(~7 か月齢)の頭蓋・下顎骨・下肢骨それぞれの骨芽細胞と幼若骨細胞・骨細胞において,骨細胞への分化に伴ってインテグリンが変化すること,インテグリンのサブユニットが,それらの細胞においてLIPUS 刺激と伸展刺激を使い分ける機能に関与することを今年度検証する予定である。 これまでの代表者らの研究から示唆されている,骨芽細胞が骨細胞へと連続的に分化する際にα5β1 からαvβ3 への交代が起こり,骨の力学的刺激応答における役割が変化するという仮説に加えて,25年度の本研究の結果から 顎骨では,正常な咬合の力学刺激ないし代替のLIPUS 刺激が負荷されていれば,α5β1 インテグリンはインフラマソームを活性化することなく骨のリモデリングを進行でき,骨細胞にアポトーシスを起こすこともないと想定されるので,当初25年度に計画した通り単離した細胞を用いて提唱したメカニズムを検証する。
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次年度の研究費の使用計画 |
動物飼料代の大学からの請求が数か月遅れるため。 平成26年1月以降分の動物飼料代の大学からの請求に応じて、次年度請求分のその他の支出項目の費用に充当して使用する。
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