研究課題
本研究では,骨組織が遭遇するする様々な力学的刺激の受容において,骨芽細胞を標的とする低出力超音波パルス(以下 LIPUS)刺激と,骨細胞(オステオサイト)を標的とする伸展刺激を使い分ける機能が,骨芽細胞の骨細胞への分化に伴って変化するインテグリンのサブユニットにより調節されてい るという作業仮説を検証することを目的とし,特に力学刺激依存性が高く,しかも同じフィブロネクチンをリガンドとするα5β1 とαvβ3インテグリンについて,力学刺激の下流におけるその制御を検討した.8週齢のC57BL6/Jマウスから,すでに報告した方法を用いて1)コラゲナーゼと4mM EGTAを組み合わせた方法で骨芽細胞と骨細胞を単離し,2)低出力超音波(LIPUS)刺激と伸展刺激を加えた。3)24時間おきに力学刺激を与え,必要に応じて刺激20分前に各種情報伝達リン酸化酵素の阻害剤を投与して伝達経路の検討を行うため,継時的に細胞を回収した。固定後の免疫染色でタンパク質の発現を,回収したmRNAからは遺伝子発現の変化を解析した.その結果,正常な咬合などの力学刺激の代替と考えられるLIPUS 刺激負荷の条件下では,①LIPUS刺激に応じて骨芽細胞が骨細胞方向へ分化し,骨細胞を標的とする伸展刺激を司るαvβ3インテグリンがタンパク質・mRNA共に増加傾向を示した.さらに,②LIPUS→α5β1 インテグリン→RANKL・BCl-2 の経路によりERK1/2非依存的に情報が伝達され,アポトーシスを防ぐと共に骨のリモデリングが遂行できると考えられた. 一方,③伸展刺激を負荷された骨細胞画分においては,αvβ3インテグリンはやはり増加し,中和抗体による情報伝達の抑制も見られたが,いずれもLIPUS 刺激を負荷した骨芽細胞のほうが顕著であった.
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