研究課題/領域番号 |
25350543
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研究機関 | 横浜薬科大学 |
研究代表者 |
弓田 長彦 横浜薬科大学, 薬学部, 教授 (40191481)
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研究分担者 |
岩瀬 由未子 横浜薬科大学, 薬学部, 講師 (00521882)
梅村 晋一郎 東北大学, その他の研究科, 教授 (20402787)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 音響化学療法 / 超音波 / 機能性フラーレン / 脂質過酸化 / 活性酸素 |
研究実績の概要 |
超音波は、電磁波などにくらべ生体中や水溶液中を伝播しやすく、媒体中にミクロな気泡を発生させて瞬時に破壊するキャビテイション現象を起こして音響化学作用を導くことができる。液中の粒子に比較的大きな輻射圧を与えることができるなどの特長を有している。ところが、これらの作用は超音波の非線形効果に基づくため、その機構の解明が充分には進んでおらず、従来、その応用の多くは経験的に行われていた。この研究では、超音波による新しいがんターゲティング実現を目標とし、音響化学反応の生体内制御を可能とする生体内音響化学反応のメカニズムの探究を行う。我々は、これまでの基礎研究により、ナノ粒子であるフラーレン誘導体が超音波照射により顕著な抗腫瘍効果を発生することを発見した。上記薬物の薬物単独による毒性は、従来の抗癌剤に比べて無視できるほど小さく、また、超音波の集束性により超音波焦域外における音響化学効果発生を原理的にさらに小さく抑えることができるので、超音波を集束した患部以外における副作用が実質的に無視できる治療の実現を期待することができる。そこで、本研究では、従来の治療法の技術的な限界を克服することを目的に、遠隔作用力を持つ外部エネルギーである超音波と音響化学的に抗腫瘍活性化する水溶性の機能性フラーレン誘導体を組み合わせた新たな腫瘍ターゲティングシステムの開発を行うことを目的とした。本年度は、超音波単独、または水酸化フラーレンとの併用による単離腫瘍細胞に対する過酸化脂質産生の増強を確認した。さらに、活性酸素種消去剤添加の超音波と水酸化フラーレン併用による過酸化脂質産生に対する影響を検討したところ、一重項酸素の消去剤であるヒスチジンの添加が、超音波と水酸化フラーレン併用処置の過酸化脂質産生を著しく抑制することを認め、その過酸化脂質産生機序における一重項酸素の関与を推定した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
音響化学的な細胞のダメージ部位として細胞膜が考えられている。マロンジアルデヒド(malondialdehyde: MDA)は細胞膜の脂質過酸化分解生成物の一つであり、細胞膜脂質過酸化の主要なマーカーとしてよく用いられる.今回の研究ではMDAの形成を測定することにより超音波と水酸化フラーレン併用による過酸化脂質の産生増強を調べる.超音波単独、または機能性フラーレン誘導体との併用による単離腫瘍細胞に対する細胞膜脂質過酸化を確認した。超音波と併用することにより脂質過酸化が発現、または増強される機能性フラーレン誘導体をスクリーニングした結果、水酸基30個が付加された水酸化フラーレンで優れた増強効果を認めた。超音波の作用には活性酸素種による化学作用があると推定されるため、活性酸素種消去剤添加の超音波と水酸化フラーレン併用による脂質過酸化作用に対する影響を検討した。OHラジカルの消去剤であるマンニトールとスパーオキサイドラジカルの消去剤であるSODは併用による脂質過酸化に対し有意な抑制作用を示さなかったのに対し、一重項酸素の消去剤であるヒスチジンの添加が、超音波とフラーレン、または水酸化フラーレン併用処置の細胞膜脂質過酸化を著しく抑制することを認めた。以上の所見より超音波と水酸化フラーレン併用による細胞膜脂質過酸化機序において一重項酸素の関与を確認した。
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今後の研究の推進方策 |
超音波単独、または水酸化フラーレンとの併用によるアポトーシス誘導を、培養細胞で確認する。アポトーシス誘導の判定は、蛍光顕微鏡による形態変化の観察、DNA断片化のアーガロース電気泳動による検出とカスパーゼ3の活性化によって行う。 固形腫瘍に対する超音波と水酸化フラーレンとの併用による抗腫瘍効果を腫瘍の増殖抑制と病理的評価により検討する。超音波の強度、水酸化フラーレンの濃度を変化させることで細胞膜脂質過酸化と殺細胞作用との相関を調べる。超音波照射による水溶液中での活性酸素生成を電子スピン共鳴(ESR)により測定する。活性酸素に特異的なスピントラップ剤による生成量の測定と消去剤による阻害効果により一重項酸素の関与を推定する。また、超音波の強度、水酸化フラーレンの濃度を変え活性酸素の生成を調べる。さらには、超音波の強度、水酸化フラーレンの濃度を変化させることで細胞膜脂質過酸化と活性酸素生成との相関を調べる。横浜薬科大学では、申請した研究内容を行うための電子スピン共鳴などの機器設備はほぼ完備されている。そのために、今回の研究経費は消耗品、実験動物の購入、成果の論文掲載費および学会等での発表に関わる旅費に当てられる予定である。
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