研究課題
基盤研究(C)
・研究目的マウスでの冠状動脈撮影のため、X線ミラーにより高輝度な準単色X線を生成し、さらにサブミリ秒でのX線露光が可能なX線シャッターを開発して、サブミリ秒での高速撮影を可能とする。これを使い各種の病態モデルマウスで、薬効評価や病気の解明での高精度化を実現する。・平成25年度の実績本研究の中心課題であるX線ミラーの開発を行い、高強度な準単色X線の生成を実現し、当該年度の目標をほぼ達成した。従来の結晶分光器により血管造影でのコントラストが最も高い33.2 keVの単色X線を生成した場合は、エネルギーバンド幅が15~25eVであり、これは白色X線である放射光の中から、33.200~33.215keV(又は~33.225keV)の間の非常に狭い範囲内のエネルギー成分のみを取り出したことになる。しかし、血管造影の場合は、X線のエネルギーが33.2keV以上ならば、エネルギーバンド幅が広くても問題ない。この性質を利用して、X線ミラーと金属フィルタを使いエネルギーバンド幅が広い準単色X線を生成した。白金を石英にコーティングしたミラーを使い、ミラー表面に対して0.1度の角度で入射した場合は、40keV以上のX線はほとんど反射されないため、出射されるX線は約40keV以下のエネルギー成分のみとなる。さらに、出射されるX線に対して、金属板フィルタを透過させると、通常のX線吸収により低いエネルギー成分ほど強く吸収される。この結果、金属フィルタの厚さを調整すると、透過したX線は33keV以上のエネルギー成分のX線となる。この結果として、約33keV以上で、約40keV以下のエネルギー成分から成る準単色X線を生成することができた。これを結晶分光器でのバンド幅15~25eVと比較すると100倍以上のバンド幅となり、100倍以上のX線強度の向上が期待できるようになった。
2: おおむね順調に進展している
本年度は研究の中心であるX線ミラーの開発を行い、高強度な準単色X線の生成を実現したため、当該年度の目標をほぼ達成した。白金を石英にコーティングしたミラーを準備し、これを収納するヘリウムチェンバーを製作した。このチェンバーを施設の中に常設し、定常的に本研究のための実験が可能な状態を実現した。ミラーはチェンバー内で微調整が可能であり、入射X線に対するミラーの角度を調整でき、反射して出射するX線のエネルギーを自由に調整することが可能である。入射X線に対するミラーの角度を調整しながら、金属フィルタを透過した出射X線のエネルギー分布を測定し、ほぼ予定どおりの性能が得られることが判明した。
今後の予定では、平成26年度に、ミラーを湾曲させてX線ビームの縦方向を拡大するミラー光学系の開発、シャッター時間が0.2 msまたはこれ以下であるX線シャッターの開発、撮影速度100画像/sを目指した画像検出器の開発などを行う。平成27年度は、従来装置でラット冠状動脈撮影実験を行っている大学医学部のSPring-8の利用者と共同で、新たな装置をマウス実験に適用してその性能評価を行う予定である。これらの計画に変更はなく、予定どおりに進めることが可能である。
当該年度の交付決定額を上回る機器の購入には所属機関の予算を使用したため、この分の一部が次年度使用額として残ったためである。次年度での機器購入において、比較的高額で性能が高い機器を選定する。
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すべて 雑誌論文 (6件) (うち査読あり 6件) 学会発表 (5件) 備考 (1件)
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