研究課題
本研究は、PAMPSゲルが誘導する細胞分化現象において共通に変動するタンパク質や遺伝子を網羅的に解析し、分子レベルで分化誘導の機序を明らかにすることを目的としている。本年度では、ATDC5細胞が分泌する細胞外基質を蓄積させたconditioned-PAMPSゲルに含まれるタンパク質の網羅的な同定を試みた。その結果、conditioned-PAMPSゲルにはコラーゲンやその結合タンパク質が多く蓄積されていることが明らかとなった。これらの蓄積タンパク質の軟骨分化における機能を調べるために、その一つであるthrombospondinをノックダウンしたATDC5細胞を樹立し、PAMPSゲルによって誘導される軟骨分化をreal-time PCRによる軟骨分化マーカー遺伝子の発現変動を調べることで評価した。その結果、ノックダウン細胞ではPAMPSゲルによる軟骨分化誘導が抑制されていることが明らかとなった。さらに、培養液中にrecombinant thrombospondinを加えることでPAMPSゲルによる軟骨分化誘導能が亢進することが明らかとなった。また、前年度においてPAMPS結合タンパク質として同定したインテグリンをノックダウンした細胞株も樹立し、この細胞ではPAMPSゲルによって誘導されるBMP4遺伝子の発現が抑制されることを明らかとした。以上の結果から、ATDC5細胞はインテグリンを介してPAMPSゲルからの刺激を受け取りその遺伝子発現を変化させること、その発現変化によって細胞外基質の発現・分泌が上昇しそれらがPAMPSゲルに蓄積すること、そして蓄積されたthrombospondinを含む細胞外基質が更なる刺激をATDC5細胞に与えることで軟骨分化を誘導することが明らかとなった。
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Journal of Biomedical Materials Research Part A
巻: 104 ページ: 734-746
10.1002/jbm.a.35615