研究概要 |
ポリエチレングリコールとポリ(3-ジメチル(メタクリロイルオキシエチル)アンモニウムプロパンスルホン酸)によるブロックポリマー(PEG-b-SB)を、PEG分子量が1,000-5,000、またSB分子量が10,000-50,000の範囲で調製した。これらのポリマーは、純水中においてマイクロメートルサイズの中空粒子を形成し得るが、構造安定化あるいはサイズ制御を試みると、多層膜型のミクロスフィアとなることが明らかとなった。これらのミクロスフィア溶液の塩化ナトリウム濃度を増加させていくと、SBポリマーに由来する上限臨界共溶温度(UCST)が低下した。どの組成のPEG-b-SBでも100 mM以上の条件では、室温でミクロスフィアは溶解した。 そこで、より塩溶液中で安定なベタイン含有ナノ粒子の調製を目指し、側鎖間のスタッキングによる構造安定化を期待して、ピリジニウム型スルホベタイン(PySB)の利用を考え、PEG-b-PySBを調製した。得られたPEG-b-PySBは、いずれも純水中には溶解しなかったため、10倍濃度のリン酸緩衝液(PBS)中にて溶解し、生理塩濃度まで希釈することでサイズの揃った粒子が得られることが確認された。またPEGの分子量が増加するにつれてその粒径は減少し、PEG分子量が5,000のポリマーでは100 nm程度の流体力学径が得られた。このときPBS中では4日後もほとんど粒径に変化が認められず、安定なナノ粒子の調製に成功した。一方でリン酸緩衝液中の塩化ナトリウム濃度を増加させても、室温においてはいずれも約500 mMまで溶解せずに粒子状態を保持しえた。これらの結果は、双極子-双極子相互作用を会合因子として生理条件下で有効に利用し得ることを示す重要なものである。
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