研究課題/領域番号 |
25350549
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
森本 展行 東北大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (00313263)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 自己組織化 / ベタイン型コポリマー / ナノ粒子 / 細胞毒性 / 刺激応答性 |
研究実績の概要 |
スライドガラス上に白金電極を有したウェルを試作し、前年度までに調製したポリエチレングリコールとポリ(3-ジメチル(メタクリロイルオキシエチル)アンモニウムプロパンスルホン酸)によるブロックコポリマー(PEG-b-SB)からなる自己組織化ミクロスフィア水溶液に対して交流電場を負荷した。この結果、10Hz以下の条件ではミクロスフィアの融合が接触により観察された。この融合は100Hz以上の条件では起こらないこと、またポリマー鎖のSBブロック長に依存して抑制された。また、塩添加条件下ではミクロスフィアは不安定化され容易に融合を引き起こすことを確認した。 PEG-b-SBおよび上記モノマーユニットの組み合わせのランダムコポリマー(PEG-ran-SB)、また前年度に調製したピリジニウム型スルホベタイン(PySB)ブロックを有するPEG-b-PySBについてHeLa細胞を用いて細胞毒性を検討した。この結果、PEG-b-SBおよびPEG-ran-SBにおいてはポリマー濃度が1.0 mg/mL以下では細胞毒性を全く示さなかったのに対し、PEG-b-PySBでは1.0 mg/mLの条件でおよそ60%の生存率であることがわかった。この実験の中でPEG-ran-SBナノスフィアが血清存在下、非存在下に関わらずすべての細胞に対して迅速に導入されていくことを見いだした。このナノスフィアの細胞内導入は核やミトコンドリア内まで到達しえること、また一方で細胞内からの放出が37℃では迅速に起こる一方で4℃においては残存させえることが確認された。細胞内取込み機構について各種エンドサイトーシス経路の阻害剤を添加しても細胞取込み能に変化がないことを明らかとした。これらの結果を受けてPEG-ran-SB末端にドキソルビシンを修飾した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度実績の電場条件下でのミクロスフィア挙動解析は、スライドガラス上に白金電極を有したウェルを固定することで構築した。このシステムは、前年度の顕微鏡下で観察可能な加熱冷却の高速制御ウェル作成のノウハウを有効に利用して試作・構築したシステムである。これらの組み合わせることでin vitro誘電加温システム評価系の構築につながる。高速温度制御システムを搭載することは、細胞培養を行うスケールにするため難があるものの、定温制御や温度モニターを行うことは難しくないと予想している。 一方、細胞評価系についても前年度の知見を掘り下げることができた。PEG-ran-SBナノ粒子がエンドサイトーシス経路を辿ることなく、すべての細胞に迅速に取り込まれたことは、申請当初の想定と大きく異なる結果であったが、一方で細胞内からの脱出も観察されることから、より詳細な挙動解析とともに精密な制御を可能とすることで、PEG-ran-SBナノスフィアへの機能付与、あるいは新規性の高いナノキャリアの設計につながると期待できる。
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今後の研究の推進方策 |
in vitro誘電加温システム評価系の構築 細胞培養条件下で利用しえるin vitro誘電加温システムの構築を目指す。これまでに構築してきたシステムのノウハウを生かしつつ、滅菌・繰り返し使用も可能なシンプルな設計をベースとして進めていく。基本は浮遊細胞への適用とするが、電極にリボン型白金を用いることで接着細胞への適用についても検討を行う。 in vitro細胞毒性評価 これまでに得られている静的条件下でのポリマーの細胞毒性に加え、ドキソルビシン修飾したポリマーの効果についても検討する。この際、ドキソルビシン修飾ナノ粒子の細胞内分布についても注意深く観察を行う。さらに上記の誘電加温システムが構築され次第、細胞内導入したナノ粒子に対して電場印加した場合の毒性発現効果について評価していく。これらの結果をうけて新たなキャリアの設計や今後の指針について検討していく。
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