平成27年度は、前年度に引き続き、糖鎖RAFT試薬を用いたビニルモノマーの水中でのミニエマルション重合を実施した。構造の制御された糖鎖末端ポリマーを与える重合条件を見出し、本重合系の有用性を実証した。糖鎖末端ポリマーのキャストフィルムを作製し、ウシ血清アルブミン (BSA) の吸着試験を行った。フィルム表面でのBSAの凝集は効果的に抑制され、本研究で合成したサンプルが抗血栓性を付与するポリマーコート剤として有用であることが支持された。水の接触角は74.8度であり、フィルム表面への糖鎖由来の親水性の付与が示された。 研究期間全体を通じて実施した研究の成果について述べる。材料表面に抗血栓性を付与するポリマーコート剤を開発することを目的に研究を行った。その素材として、未知感染症に罹患する恐れのない植物由来の「糖鎖」を親水部として末端に有するビニルポリマー、すなわち糖鎖末端ポリマーに注目した。当該基盤研究では、糖鎖RAFT試薬を新たに開発し、その界面活性能を明らかとした。糖鎖RAFT試薬を用いたビニルモノマーの水中でのミニエマルション重合を初めて実施した。この方法が、糖鎖末端ポリマーの精密合成法として、環境面およびプロセスの利便性いずれにおいても従来法に比べ非常に優れたものであることを示した。サンプルによるフィルム作製およびタンパク質吸着試験を行い、本RAFTミニエマルション重合で合成した糖鎖末端ポリマーが抗血栓性を示す合成材料として有用であることを示した。
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