研究課題/領域番号 |
25350560
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
中口 俊哉 千葉大学, フロンティア医工学センター, 准教授 (20361412)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 医療トレーニング / 穿刺 / 反力再現 / 拡張現実感 / 模擬患者 |
研究概要 |
模擬患者に対して非侵襲的に仮想穿刺を行うためには専用の反力再現デバイス(HNSP, Haptic Needle for Simulated Patient)が必要となる.HNSPは体表に接触した時点から針が収縮することで模擬患者を傷つけず,視覚的には針が体内へ挿入されている様子を再現する.初年度はこの反力再現デバイスHNSPの開発に注力した.最大提示反力,時間分解能,応力値分解能などの点において,複数の試験器を試作し比較評価した.デバイスの反力再現機構部は可能な限り小型で通常の穿刺針の形状に近づけるため,専用の圧縮機構を開発した.原理試作機を開発して原理確認を行ったあと,小型プロトタイプ機の試作を専門業者へ依頼した. また,これと平行して痛覚フィードバックの方法と,それに必要なハードウェアデバイスの開発を行った.模擬患者は仮想的に挿入されている針先端部の詳細な位置を把握していないため,針の挿入に伴う痛みなどの感覚を再現することが困難である.そこで,制御装置から模擬患者に対して痛み等の情報を遅延なく伝達する手法を提案した. デバイス開発と共に数理体型モデルの構築に取り組んだ.成人体型をモデル化し,身長,胸囲,腹囲,BMIといった模擬患者の外面的特徴を元に体型モデルを適合させ仮想人体と模擬患者の体型を近づける手法を確立した.数値モデルの構築には個人情報を排除した多人数匿名CTデータを利用した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度の研究目標としていた3点の課題に対して概ね順調に成果を得ることができた. まず,反力再現デバイスは3種類の機構を実装及び評価し,効率的で小型化が可能な機構を選定することができた.この機構を元に原理確認を遂行した.最終的に小型プロトタイプ機を完成させるまでに至った. 2点目として模擬患者への情報伝達方法について,視覚的,聴覚的,触覚的な方法を比較検討し,遮蔽に強く,応答性にも優れた触覚的な情報伝達手法を提案した. 3点目として数理体系モデルの構築が課題であったが,大規模匿名化人体構造データベースから人体構造の統計モデルを構築し,外見的特徴からの平均的な人体モデル生成アルゴリズムを提案した.
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今後の研究の推進方策 |
今後はハードウェア,ソフトウェア,数理モデルを統合し,医療手技トレーニングを実施できるシステムとして統合する必要がある.ここで模擬穿刺針の空間的位置を検出するため光学センサーを利用する.仮想穿刺針の位置と角度を制御装置が検出し,模擬患者との接触判定を行う.模擬患者の位置と粗形状は廉価な深度計測カメラを使って計測する.針に伝わる触覚を再現するため仮想人体の組織モデルと針の間に発生する破断・摩擦を物理的に解析する.全体のデータ量が多くまた,膜組織の破断など微細な触覚変化を再現するには高負荷の計算が必要となる一方,スムーズな触覚提示のためには一般に500Hz以上という高速な更新レートが求められる.そこで物理計算を効率化し,また並列処理アルゴリズムを導入して,目標の処理速度と精度を実現する. 次に物理モデルを構築するためには様々な組織を計測してモデルパラメータを決定する必要がある.検討中の案として実験豚の臓器を摘出し,各臓器に計測針を挿入して物理パラメータを決定する.また,体表からの穿刺モデル構築については,皮膚の特性が豚とヒトでは全く異なるため,皮下脂肪層から計測を始めることで,各層を通過する物理パラメータを決定する.実験には千葉大学サイエンスパークセンターの動物実験設備を利用し,組織構造は同施設に保有するCT, MRI装置を用いて計測する.
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