本研究の目的である,拡張現実型医療トレーニングシミュレータは高いリアリティ再現が重要となる.そのため,システムの完成度が評価に強く影響する.昨年度まで構築したシステムについて医師の評価の結果,再現反力範囲が不十分であること,またデバイスの見えが医療器具とかけ離れていることが強く指摘された.そこで平成27年度はまずシステムの改善に着手した.反力再現機構と制御回路を見直すことでノイズと時間応答性が改善した.また再現できる最大反力が12Nから25Nへと倍増した.また,反力再現構造を小型化し,実際の注射器内にほぼ全ての機構を収めることに成功した.さらに,前年度までは高い精度を有する三次元位置検出装置を用いていたが,サイズ面・価格面のコストが大きく,取り扱いに専門的知識を要することから,医療機関での評価実験が困難であることがわかった.そこで平成27年度は,三次元位置検出法を見直し,小型安価な計測器とセンサーを組み合わせることで十分な三次元位置精度を獲得した.最後に構築したシステムの有効性評価を実施した。手技は上腕の静脈血採血を対象とし,既存の模型モデル穿刺シミュレータと本研究で構築した拡張現実型シミュレータの比較評価を行い,提案した拡張現実型穿刺トレーニングの有効性を確認することができた.
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