研究課題/領域番号 |
25350562
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 電気通信大学 |
研究代表者 |
野村 英之 電気通信大学, 情報理工学(系)研究科, 准教授 (90334763)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | パラメトリック音源 / パルス圧縮技術 / チャープ信号 / 超音波イメージング / 距離分解能 |
研究概要 |
パラメトリック音源は低周波であるにもかかわらず,指向性が鋭いといった特徴を持つ.そのため,高散逸媒質中でも深い深達度で超音波画像の取得が可能となる.ただし,低周波であるため,距離分解能が低いといった問題を有する.本研究は,この距離分解能の問題を解決し,広範囲を超音波で映像化するための技術を開発することを目的とする.本年度は,パルス圧縮技術をパラメトリック音源へ適用し,距離分解能が改善されるかどうかについて検討を行った. まず,パルス圧縮のためにチャープ信号で変調されたパラメトリック差音が生成可能について検討を行った.音源の駆動は音源の中心周波数である2.1MHzの信号を,差音が発生するように変調を行った.ここでは生成される差音の掃引開始周波数が100kHz,掃引帯域幅が100, 200, 300, 400kHzになるような信号を用いた.水中を伝搬した1次波が媒質のもつ非線形性により,歪み,差音が発生する.この非線形伝搬してきた超音波をハイドロホンで受波,さらに差音信号を抽出した.その結果,望まれるチャープ信号となった差音の生成が確認された.ただし,差音生成のメカニズムに起因する,瞬時振幅の周波数依存性が確認された. 次に,受信したチャープ差音のパルス圧縮を行った.受信したチャープパラメトリック差音はコンピュータへ転送され,信号処理が行われた.ここでは受波チャープ信号の自己相関処理を行った.得られた自己相関関数のメインローブの幅を,圧縮パルス幅として評価した.その結果,圧縮パルス幅は理論と一致した. これらの結果から,非線形現象に起因するパラメトリック差音においても,パルス圧縮技術が有効であることがわかった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的は,低周波数であるにもかかわらず鋭い指向性をもつパラメトリック音源にパルス圧縮技術を適用し,深達度の深い高距離分解能を有する超音波イメージング技術手法の確立である.そのために,平成25年度はパラメトリック音源にパルス圧縮技術が適用可能かを検討することであった. 実施計画をもとに研究を実施し,当初のアイディアどおり,パラメトリック音源に対してもパルス圧縮技術が有効であること,すなわち,高距離分解能を有する低周波指向性音源の実現性が示された. このことから,本研究は概ね順調に進展していると判断する.
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度までの研究で,パラメトリック音源に対してもパルス圧縮技術の適用が有効であることが分かった.今後は高距離分解能を有する低周波指向性音源を用いた,深達度の深い超音波イメージング技術の確立に向け,以下についての検討を実施する. (1) 有効な検出ターゲットサイズの検討: 差音は波長が長いため,検出可能なターゲットサイズが大きくなることが予想される.そのため,ターゲットサイズとエコーレベルの検討が必要となってくる.(2) 受信エコーレベルの検討: 差音は非線形現象を利用するため,エコーレベルが低いことが予想される.そのため,ターゲットサイズとエコーレベルの関係の評価,さらには受波用センサの改良や信号処理方法の検討で対応を図る.(3) イメージングシステムの構築と評価: 最終的には超音波イメージングシステムのプロトタイプを構築し,従来型高周波超音波イメージングとの比較や,深達度の拡大化の評価を行う.
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次年度の研究費の使用計画 |
該当年度の研究実施において,当初,複数のトランスデューサを検討することを目論んでいた.しかし,制作時間の問題から多くのものを作成することができず,その結果当初予算が余る結果となった. 今年度の研究において,複数のトランスデューサを作成と評価を試み,より最適なトランスデューサ構造を決定する.
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