研究課題/領域番号 |
25350565
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 三重大学 |
研究代表者 |
中山 良平 三重大学, 医学部附属病院, 助教 (20402688)
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研究分担者 |
石田 正樹 三重大学, 医学部附属病院, 助教 (10456741)
佐久間 肇 三重大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (60205797)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 冠動脈MRA / 冠動脈狭窄 / 検出支援システム / 超解像技術 |
研究概要 |
本研究の目的は,冠動脈MRA像における冠動脈狭窄検出支援システムの基礎研究を行い,その臨床応用への可能性を明らかにすることである.冠動脈MRA像では空間解像度の不足から冠動脈末梢部が不鮮明に描出される.そこで,本年度は,冠動脈MRA像に最適化した超解像技術を開発し,ソフトウェアにより冠動脈MRA像の高解像度化を実施した.開発した超解像技術は,まず,低解像画像と高解像画像のペアで構成される参照画像をパッチと呼ばれる小領域に分割し,次に,その対応関係を用いて,入力低解像パッチに対する高解像パッチを推定することにより,入力低解像画像の高解像画像を生成する.本研究では,高解像度化の正確さを評価するため,縮小画像を超解像技術,双三次内挿法により元の画像サイズへ復元したときの元画像に対する忠実度を比較した.その結果,超解像技術のRoot Mean Squared Error, Peak Signal-to-Noise Ratio, Structural Similarity Index は2.52, 22.2dB, 0.989,双三次内挿法は3.08, 20.2dB, 0.984であり,超解像技術が双三次内挿法より復元の忠実度が有意に向上し(P < .001),より正確な高解像度化が可能であることが示された. また,超解像技術と双三次内挿法により冠動脈MRAを高解像度化(拡大)し,冠動脈狭窄検出における医師の診断能を観察者実験により比較した.Receiver Operating Characteristic解析の結果,ROC曲線下の面積は,超解像技術で0.861,双三次内挿法で0.797が得られ,超解像技術における診断能が有意に優れていた(P = .024).この結果により,超解像技術が診断に悪影響を及ぼすアーチファクトを発生させていないことが確認できた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度の研究として,●ヘシアン行列の概念を導入した3次元フィルタバンクによる冠動脈強調アルゴリズムの開発,●冠動脈の信号強度,コントラスト,形状に基づいた冠動脈抽出アルゴリズムの開発,の2項目を計画していた.しかし,申請時の予想よりも冠動脈MRA像の空間分解能が不足していたため,ソフトウェアにより空間分解能を向上させる超解像技術の開発に従事した.したがって,「当初の予定よりもやや遅れている」状況である.開発した超解像技術を前処理として使用することにより,高解像度化,高画質化された冠動脈MRA像が得られたので,冠動脈抽出アルゴリズムの開発は比較的容易であると考える.
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究として,まず,冠動脈MRA像における冠動脈辺縁部の構造を適切に強調するために,円形・線状パターン検出のための2次元フィルタバンクを3次元に拡張する.そして,冠動脈の信号強度,コントラスト,形状などを条件とした領域拡張法により,高精度に冠動脈を抽出する.これらは超解像度技術により高解像度化,高画質化された冠動脈MRA像を対象とするため,比較的容易に手法を確立できると考える.次に,狭窄部位の冠動脈は,冠動脈MRA像において径の縮小,信号値の急激な減少がみられる.そこで,冠動脈の正常モデルを構築し,正常な冠動脈と狭窄部位との定量的な違いを明らかにする.そして,その違いに基づき,高精度な狭窄部位検出アルゴリズムを確立する.
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次年度の研究費の使用計画 |
システム開発用,運用のための高性能サーバーの購入が遅れたため 冠動脈狭窄検出支援システムの開発および運用のための高性能サーバーを購入する予定である.また,これまでの研究成果および今後の研究成果発表のための旅費として使用する計画である.
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