研究課題
基盤研究(C)
本研究は、術中追従開始直前にスキャンして記録した患部周辺の微小範囲の超音波3Dデータと追従中に観測した2Dデータのマッチングにより、通常の2D超音波プローブのみで構成する3Dビジュアルサーボの性能を生体の治療、特に肝臓の集束超音波治療に適用可能な程度に高めることを目的としている。H25年度は、まず要求仕様抽出のため対象臓器であるヒト肝臓の呼吸性移動を、超音波を用いて他点的に計測し定量的に明らかにした。その結果、体幹軸方向の移動量が最大18mmという測定値を得た。次にこの結果に基づき、超音波対応の軟性肝臓モデルを用いて胸腹部の呼吸ファントムを設計した。市販の産業用ロボットと超音波診断装置を用いたプラットフォームにて、既存の追従アルゴリズムを3自由度で構成し、実際の呼吸するヒト肝臓に適用し、追従可能な限界を測定したところ、約4分間半の肝臓追従が可能であることが判明した。この時の振幅は約14mmであった。特に呼吸の呼気・吸気末期の折り返し時の追従誤差が問題点として明らかになった。また超音波画像の鮮明度、サイズを変化させて比較検討を行ったところ、これらいずれも追従精度への影響が大きいことが分かった。追従自由度数も1自由度と3自由度では大きく安定性が異なることが分かった。アルゴリズムの改良を、関心領域の細片化、特徴点利用、画像処理高速化について試みた。関心領域の細片化についてはそのサイズの最適化が課題、特徴点利用については一定の効果があった。GPUを用いた高速化は、画像データ転送の時間がボトルネックとなることが判明した。これらについて改良を加えた。
2: おおむね順調に進展している
今年度の目標(7項目)の全てに着手し、一定の結果を得ているため。
超音波プローブを患者体表で把持するマニピュレータおよびその保持台を開発する。今年度明らかにした臓器の移動量、速度等から要求仕様を抽出し、機械的・電気的な安全性を考慮した機構を設計開発する。また、今年度明らかになった追従アルゴリズムの課題をもとに、実際の適応である集束超音波治療用にカスタマイズした追従手法の開発・実装を行う。
・呼吸ファントムの最終版設計が年度末となり、部品発注が翌年にずれ込んだため。・画像キャプチャボードの要求仕様を確定させるまで、研究室所有の安価なもので代替したため。今年度未使用分は次年度に予定通り発注予定。また、次年度はロボットのハードウェア作成を予定しており、大きな費用がかかるため全体予算をオーバーしないように支出計画を立てる。
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