研究実績の概要 |
新生児が四肢を自然に動かす自発運動 (GMs)の観察が,脳機能障害の早期発見のための診断方法の1つとして用いられている.定型発達をしている児のGMsは、生後6~9週まで起こる“もがく様な”自発運動(WM)と生後6~20週まで起こる“ダンスを踊っている様な”自発運動(FM)が特徴的である. 本研究の目的は、障碍のリスクを伴う低出生体重児の自発運動解析を行うために,保育器環境内の低出生体重児を対象に運動計測・障害予測システムを提案することである。本年度は、具体的にはGMsの経時的変化と身体重心変化の関係性を明らかにした. 我々は,新生児にマーカーレスでビデオカメラ(Sony社製)1台を用いて児の上部から撮影した画像を解析する方法を共同開発している(島ら,2007).本研究では,その手法を用いて検証した.対象は,3名の新生児とし,出生後2週~15週間を経時的に計測した. 被験児1と被験児2が修正7-8W,被験児3が修正9-10週にWMからFMに変化した.システムの結果,すべての被験児が下肢の運動頻度が経時的に増加した(p<0.05).上肢の運動頻度は増加しなかった.被験児1が6-7週,被験児2が7-8週,被験児3が9-10週を境として,一旦減少した頭尾方向の重心変化が2次関数的に増大した.これらの結果は,WMがFMに移行している時期と一致していた.左右方向への重心変化は週齢毎に減少した(p<0.05). 身体重心変化(頭-尾方向)の経時的変化はGMsの移行期と一致している可能性が示唆され,この時期の重心変化の観察の重要性が示唆された.
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