研究課題/領域番号 |
25350577
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
小林 洋 早稲田大学, 理工学術院, 准教授 (50424817)
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研究分担者 |
藤江 正克 早稲田大学, 理工学術院, 教授 (20339716)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 乳がん診断 / 非線形弾性 / 有限要素解析 / 手術支援ロボット |
研究概要 |
本研究では,低侵襲性かつ高精確性な乳腺腫瘍の質的診断および治療効果判定を支援するために,臓器変形シミュレータを用いて高精度に生体組織の非線形弾性パラメータ分布を推定する触診ロボットの開発に取り組んでいる.平成25年度は,以下の研究課題に取り組んだ. (1) 触診ロボット動作軌道の逐次計画に用いる乳房変形応答データベース構築:腫瘍と周辺組織について高精度な非線形弾性パラメータ推定を実現するために,ある時点で推定されたパラメータ分布から関心領域に関してさらに詳細なパラメータ分布を推定できる可能性が最も高いロボットの動作軌道が最適な動作軌道であるとして,パラメータ分布が更新されると共にロボットの動作軌道を逐次計画する手法を提案する.提案手法の実現のために,本年度は,乳房を摘まむように圧縮する2本のロボットマニピュレータの先端部大きさ・接触位置を変化させた際の乳房組織の変形状態を,臓器変形シミュレータを用いて解析し,乳房変形応答データベースを構築した.次に,構築した乳房変形応答データベースから,関心領域の非線形弾性パラメータの差異が明確になる変形応答を得ることができる先端部大きさ・接触位置の特徴を解析した.その結果,関心領域を変形させやすい条件として,次の2条件が得られた.(a)先端部大きさは関心領域の1.5倍以上であること.(b)マニピュレータの初期接触位置から関心領域中心位置までの距離が2本のマニピュレータで等しくなるような接触位置とすること. (2) 触診ロボットの開発:申請者がこれまでに取り組んできた穿刺支援ロボットで得てきた小型ロボット設計のノウハウを生かし,臨床応用可能な触診ロボットの要素設計を行った.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の研究計画のうち,本年度の実施項目として設定した(1) 触診ロボット動作軌道の逐次計画手法の構築,および,(2) 触診ロボットの開発双方について概ね順調に実施されている.ただし,乳房変形応答データベースの構築に予想以上の時間を要したため,乳房変形応答データベースと確率理論を用いた軌道計画手法の構築までには至らなかった.今後は,研究計画を整理し,研究を加速させる.
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今後の研究の推進方策 |
次年度は,まず,今年度構築した乳房変形応答データベース,関心領域の非線形弾性パラメータの差異が明確になる変形応答を得ることができるマニピュレータ条件,そして確率理論を用いて,関心領域に関して詳細なパラメータ分布を推定できる可能性が高い動作軌道逐次計画手法を構築する.そして,軌道逐次計画と非線形弾性パラメータ分布最適化を組み合わせたオンライン推定手法を構築する.また,これらの提案手法の有用性を検証するための動物実験や臨床試験の実験条件を研究分担者・連携者らと共に検討し,検証実験を行うための準備を進める.
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次年度の研究費の使用計画 |
当初の研究費使用計画では,本年度に触診ロボットの製作まで行う予定であったが,ロボット動作軌道計画手法の構築に合わせて設計をする必要があるため,ロボットの製作を次年度以降に行うこととした.そのため,当初の研究費使用計画と差額が発生した. 次年度以降の主な研究費用途は,触診ロボットの要素部品や大規模数値解析用のワークステーションである.また,提案手法の有用性を検証するための動物実験や臨床試験に関する研究出張費,成果を発表するための学会出張費にも使用する.
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