研究課題
本年度の目標は、1.呼吸器系上皮細胞(BEAS-2B、A549)とTリンパ球(Jurkat)の3培養細胞株を用いた交流磁場曝露併用による薬理作用増強効果の測定、2.シスプラチン耐性培養細胞株の樹立、3.シスプラチン耐性培養細胞を用いた磁場曝露併用による薬理作用増強効果の測定、の3点であった。1.ヒト肺がん由来上皮細胞(A549)を用いて交流磁場曝露併用による薬理作用増強効果を、コロニーフォーメーションアッセイ法にて測定した。A549細胞を10% FBS・DMEM培地で培養し、シスプラチン(1.5-4.5μg/ml)および交流磁場(60Hz, 50mT)で24時間刺激した。磁場曝露併用群はシスプラチン刺激のみに比べ、およそ1.1倍のシスプラチン薬理作用の増強を認めた。この結果を、第37回日本分子生物学会年会(2014年11月・神奈川県横浜市)および第55回日本呼吸器学会学術講演会(2015年4月・東京都千代田区)で報告した。肺がん由来細胞株に加え、正常上皮細胞(BEAS-2B)および Tリンパ球(Jurkat)についても同様に解析を進めている。また正常マウス肺および脾臓より分離したマクロファージ・リンパ球に交流磁場を曝露したときの生体反応を解析している。本年度は、2.シスプラチン耐性培養細胞株の樹立、3.耐性株を用いた交流磁場曝露併用による薬理作用の増強効果の測定、について検討を予定していたが、上述のA549細胞による薬理作用増強条件の探索および交流磁場曝露が免疫細胞に与える影響の解析がより重要であると考え優先させたため、実施していない。
2: おおむね順調に進展している
本研究の全期間を通じた目標は、ヒト由来培養細胞株において、交流磁場曝露併用によるシスプラチン薬理作用の増強効果を確認することである。この点では、A549細胞にて殺細胞効果の有意な増強が確認されたため、概ね達成されたと考える。近年、気道上皮の炎症にリンパ球などの免疫細胞が分泌するサイトカインが関与する報告が増えている。また免疫細胞が交流磁場刺激を受けることで炎症性サイトカインを分泌する報告もあることから、実施中の交流磁場刺激条件における各種免疫細胞の生体反応を確認が必要がある。正常マウス肺および脾臓より分離した初代培養細胞またはヒト由来リンパ球培養細胞株(Jurkat)を用いて、これについて解析を始めている。これまでのところ、シスプラチンなど抗がん剤を投与せず交流磁場のみの刺激では、MTTアッセイによる細胞増殖能、Annexin-V法によるアポトーシス誘導については、非曝露群と比べ差はみられない。また細胞表面マーカーを用いたリンパ球の細胞機能の変化を解析したが、これも交流磁場刺激のみでは変化はみられない。
1.薬理作用増強効果の増大を示す交流磁場曝露条件の探索 本年度は1.1倍の作用増強効果を認める交流磁場曝露条件を決定した。しかしながら抗がん剤の投薬量を減らすことで全身に起こる副作用を低減させることを目的とした医療技術として利用するには効果が小さい。H27年度はより大きな作用増強効果を示す曝露条件の探索を目指す。2.A549細胞における薬理作用増強メカニズムの解析 交流磁場曝露によるシスプラチン殺細胞作用の増強に関わるメカニズムを解析する。MTTアッセイ法による細胞増殖能、Annexin-V法によるアポトーシスの検出、γH2AX法によるDNA損傷の検出などを計画する。3.マクロファージ・リンパ球など免疫細胞における交流磁場刺激による生体反応の確認 正常および自然免疫受容体を欠損したマウスより採集した免疫細胞を用いて、シスプラチン、交流磁場刺激による生体反応を解析する。今年度実施の各種細胞死実験に加え、これら刺激によるサイトカイン等の分泌の有無をELISA法やフローサイトメトリー法にて解析する。
すべて 2015 2014
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (19件)
Crit. Care Med.
巻: 42 ページ: e716-e724
10.1097/CCM.0000000000000633