研究概要 |
本研究では,がんの早期診断への応用を目指し,新旧バイオマーカー(血中マイクロRNAおよびタンパク質)を自律駆動マイクロチップとLFDA(laminar flow-assisted dendritic amplification) を用いて簡便かつ高感度に検出できるデバイスの開発を目的としている.これまで,0.5 マイクロリットルのサンプルから一種類のマイクロRNA (miR-21-5p) を20分で,検出限界0.5 pMの感度で蛍光検出するプロトコールを確立してきた.今年度は,プローブDNAの種類を増やし,複数のマイクロRNA(miR-16, 21-5p, 500a-3p)を同時に検出する実験を行った.その結果,それぞれのマイクロRNAが迅速性を損なうことなく検出でき,異なる配列間でほとんど交差反応が見られないこと,また,検出限界が数fMからpMと配列に依存する程度が予想外に大きいことがわかった.具体的にはmiR-16の検出限界が13 fM, miR-21-5pのそれが1.5 pM, miR-500a-3pのそれが82 fM となり,それぞれ単独で測定した実験の結果と整合する値であった.今後は,プローブ設計を工夫し,ターゲットマイクロRNAとの親和性を向上させることにより,検出限界のさらなる改善,および本手法の生体サンプル由来マイクロRNAへの適用を予定している.また,タンパク質の検出に関しては,抗体を固定化する基板として3次元的な表面を持つナノポーラスシリコンを用い,2種類のタンパク質を同時に検出する実験を行った.今回は抗体を物理吸着により固定化することで,これまでの共有結合より固定化時間を短縮することができた.血清中の前立腺がんマーカーであるPSAとhK2を同時にイムノアッセイしたところ,検出限界は1 pg/mLという高感度を達成し,ダイナミックレンジは5桁にわたった.
|