研究課題/領域番号 |
25350582
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研究機関 | 富山県工業技術センター |
研究代表者 |
大永 崇 富山県工業技術センター, その他部局等, 研究員 (10416133)
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研究分担者 |
塚田 一博 富山大学, その他の研究科, 教授 (90171967)
嶋田 裕 京都大学, 薬学研究科(研究院), 准教授 (30216072)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 血中循環腫瘍細胞 / EpCAM / EGFR / マイクロ流体デバイス / 抗体 |
研究実績の概要 |
血中循環腫瘍細胞(CTC)を効率よく単離し臨床応用へ繋げることを目指し、筆者らが開発した“ポリマーCTCチップ”について検討している。ポリマーCTCチップは、マイクロ流体デバイスと抗体との組み合わせからなり、血中濃度が極めて低いためにこれまでは単離が困難だったCTCを効率よく捕捉できる。しかしこのチップでは、癌細胞表面マーカーとチップに固定した抗体の結合を利用して捕捉するため、性能は捕捉ターゲットのマーカーおよび抗体の選択に大きく左右される。ターゲットは、これまで癌の上皮性からEpCAMを選択してきたが、本研究では前報で述べた理由からEGFRについて検討している。昨年度に引き続き市販の2種類の抗EGFR抗体を使用して、高EGFR発現の癌細胞(KYSE220)でチップの捕捉率(チップに捕捉された細胞数/チップに流れた細胞数)を測定したところ、9%、24%となった。さらに抗体としてEGFRの分子標的治療薬であるCetuximabを用いると、89%の捕捉率が得られ、チップ捕捉における抗体選択の重要性が示唆された。一方、低EpCAM発現の癌細胞株(MDA-MB-231)をCetuximabで捕捉したところ、捕捉率は44%となり、EpCAMで捕捉した場合(抗EpAM抗体による捕捉率は11%)と比較して捕捉率は大きく向上することが分かった。さらに市販の抗EGFR抗体を使用して、EGFR発現レベルが異なる癌細胞(EGFR:6万~1200万receptors/cellの4種類の食道癌細胞株)でチップ捕捉率を求めたところ18~33%の値が得られた。EGFR数の変化に比べ捕捉率変化が小さく、捕捉がチップ上の抗体密度により規制されていることが考えられ、この抗体密度向上による捕捉率改良の可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
EGFRは上皮間葉転換などによりEpCAM発現が低下した癌細胞にもよく見られるので、それをターゲットとしたCTC捕捉の可能性を確認できたことにより、本研究が目的とする様々なCTCの捕捉に大きく近づけたと考えられる。また本研究から抗体選択の重要性が明らかになっており、分子標的治療薬などのターゲットマーカーへの親和性が高い抗体の効果を確認できたことは、目的達成のために極めて重要である。さらに複数種のマーカーや新たなマーカーによる捕捉の検討も進めており、より多様なCTCの捕捉に繋げられることが期待できる。
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今後の研究の推進方策 |
癌細胞株による検討では、複数種のマーカー(EpCAMおよびEGFRなど)による捕捉を実施し、さらなる捕捉率向上を目指す。また新たなマーカーについてもターゲットとし、例えば乳癌、胃癌などのCTC捕捉を念頭においたHER2による捕捉などを試みる。臨床検体によるCTC捕捉試験については、EGFRをターゲットとした捕捉から開始し、他のマーカーや複数種マーカーへも広げて行きたいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
装置製作の費用が予定を下回ったこと、および論文投稿が年度内に完了せず用意した投稿料が使用されなかったことによる
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次年度使用額の使用計画 |
論文投稿を進め、さらに残った予算は新たに必要となった捕捉用抗体の購入に充てる
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