研究実績の概要 |
本研究は,ペースメーカなどの埋め込み型医療機器が体内に埋め込まれている場合の磁気共鳴診断装置の勾配磁場やRF磁場により誘発される体内の電磁界を解析し,コンピュータシミュレーションに基づくMR安全性評価を行うことを目指している. 本年度は昨年度に引き続き,勾配磁場およびRF磁場の磁場解析および温度解析を行い,その振る舞いを考察した.頭部撮像の際の胸部に配置された心臓ペースメーカの人体との相互作用による危険性を考察した.ASTM規格による人体ファントムモデルに,銅の円形コイルおよびらせんとねじれ形状のリードを埋め込んだモデルに対して,電磁界分布を導出した.円形コイルは直径80mm, 幅5mm, 厚さ1mであり,リードは長さ150mm, 直径2mmとし,らせんの半径は40mm, ねじれはリードの1箇所にあるものとした.この時勾配磁場の周波数は500Hz, スルーレート40mT/mとした時のSAR(比吸収率)を求めた.円形コイルはコイルを貫く鎖交磁束に対しSARはほぼ線形に増加し,SARの最大値は0.0219(W/Kg)であった.また,らせんのリードでは,リードの先端で最大値0.40(W/Kg), ねじれでは,リードがループしている部分で最大値となり,その値は0.00522(W/Kg)であった. さらに,人体モデル(Duke, Virtual Population, IT’IS Foundation)に心臓ペースメーカを埋め込んだモデルに対し,頭部撮像におけるペースメーカ付近の勾配磁場およびRF磁場による電磁界分布を導出した.勾配磁場においては,ペースメーカとの接続部のリード付近でSAR最大となり,RF磁場では,下顎付近でSAR最大となった.SARの最大値は2.4E-09(W/Kg)であり,安全とされている2(W/Kg)やRFの8.61E-04(W/kg)を大きく下回り,発熱による危険性は非常に少ないと考えられた.
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