研究課題/領域番号 |
25350585
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研究機関 | 順天堂大学 |
研究代表者 |
佐瀬 一洋 順天堂大学, 医学部, 教授 (00420828)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | レギュラトリーサイエンス / 国際医療機器識別コード(UDI) / 人間医工学 / 医療機器 / 国際情報交換(医療機器国際IMDRF) / 国際情報交換(日米実践と調和 HBD) / 分散型レジストリ (ICCR/ICTVR) / 医療情報・病院情報システム |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、医療機関における国際医療機器識別コード(UDI)の意義に関する検討である。初年度の成果を踏まえ、二年目には国内研究者との交流や国際会議での委員就任が実現し、進捗状況はほぼ予定通りである。 (1) UDIに関する技術的検討:国際医療機器規制フォーラム(IMDRF)による国際基準は、表示(UDI)とデータベース(UDID)からなる。UDIは製品情報(DI)と製造情報(PI)についての機械可読性と人間可読性に関する一般的規定であり、バーコード表示のことではない。UDIDはビッグ・データによる医療イノベーションの鍵を握るため、米国FDAはHarvard大学, Cornel大学, Duke大学等との産官学連携(MD-EpiNet PPP)を開始し、パイロット・プロジェクトを実践している。 (2) 医療機器の安全性監視(PMS)に関する社会的検討:FDAのPMS白書(2013改訂版)では、 UDIとレジストリが最重点項目とされている。日本でも平成25年11月に改正薬事法(医薬品医療機器等法)が公布され、医療機器PMSの改革が期待される。本研究二年目の成果として、MD-EpiNet国際分科会の共同座長、およびIMDRF-レジストリ分科会の委員に選出され、POC研究の実践に向け大きく前進した。 (3) 医療機関におけるUDIの意義に関する臨床的検討:二年目には学会や研修会の共催により国内の有識者とも意見交換を行った。わが国では世界に先駆けて医療機器へのバーコード表示を実現したものの、UDIDに相当するデータベースの整備が不十分で、結果的に医療機関の普及遅延と業務負荷増大を招いている。今後、POC研究の実践や日本版MD-EpiNet PPPの構築を通じ、本研究の更なる発展が必要である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、医療機関におけるUDIの意義に関する技術的・社会的・臨床的検討を目的として、初年度は国内外の情報収集、そして二年目は具体的プロジェクト(POC)の開始と、ほぼ予定通り目的を達成することができた。 具体的には、国際的課題である持続可能なエコシステムの構築に向け、国内でのセミナーや研修会の主催・共催、米国でのMDEpiNet国際分科会共同座長就任、そして国際的にもIMDRFレジストリ分科会に委員として参加し、国内外の有識者ネットワークを形成し、国際共同プロジェクトを開始した(PMDRS, 46(4), 207-215, 2015)。 国内では、6月に改正薬事法(医薬品医療機器等法)に基づくエキスパート研修会、7月に学会(CVIT2015)でのHBDシンポジウム、11月と12月に順天堂大学での研究会等を主催・共催し、医療従事者、IT情報通信技術者、医療機器産業関係者、そして規制当局とともに、分散型レジストリの中核的技術であるUDIおよびUDIDの重要性を再確認した。 米国では、FDAとHarvard, Cornel, Dukeによる産学官連携(MDEpiNet)において補助人工心臓における日米連携からの国際化への発展事例を報告し、新設されたMDEpiNet国際分科会の共同座長に就任し、持続可能なエコシステム構築(PASSION)やインフォマティクス開発(SMART) に向けたPOCを開始した。 国際的には、9月のIMDRF総会で新設されたレジストリ分科会の委員に就任し、12月と1月に毎週開催された国際電話会議でガイダンス文書(案)作成と2015年4月の東京会議開催に貢献することができた。 今後とも国内外との活発な交流を続け、本研究の目的達成に向けて適切な舵取りを続けたい。
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題の今後の推進方策として、研究実施計画に沿いつつ、急速に変化する国際情勢にも柔軟に対応し、短期・中長期のマイルストーンを修正しつつ具体的プロジェクト(POC)を実践する。 申請時に予定したPOC研究では、まず補助人工心臓レジストリで日米HBDによる連携が国際レジストリ連携に発展した(INTERMACS/JMACS/iMACS)。但し、医療機関の負荷軽減が課題として残り、逆にUDI活用や分散型レジストリ連携の必要性が浮き彫りとなった。 今後、まず短期的目標としては循環器領域(ICTVR/ICCR)や整形外科領域(ICOR)への応用を、中長期的目標としてUDIやUDIDの活用による持続可能なレジストリ構築(PASSION)とインフォマティクス開発(SMART)を目指す。日本ではバーコードの先行とUDIDへの理解不足が課題であるが、POC先行による段階的整備が現実的と思われる。 また、中長期的目標としては二年目に確立した米国との関係を軸に、FDA(Dr. Danica Marinac-Darvic)、Cornel大学(Dr. Art Sedrakyan)、Duke大学(Dr. Mitchell Krucoff, Dr. James Tscheng, Dr. Terrie Reed)らとともに、MDEpiNet-PPPの国際分科会では医療機関におけるUDIやUDIDの意義に関する最先端の技術獲得やその向上に努める。 特に、三年目となる今年度はIMDRF総会の日本開催という絶好の機会を生かし、IMDRFレジストリ分科会のメンバーとして、国内の産官学関係者が最先端の国際動向に触れるのみならず、海外のキーパーソン達が日本の医療機関や医療機器産業に触れることで日本からの情報発信を推進する等、本研究の主旨を踏まえた国際交流の場を設定し、POCプロジェクトの実践を更に推進する。
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次年度使用額が生じた理由 |
初年度は研究実施体制の立ち上げとして情報収集を、二年目には具体的プロジェクト(POC)の実践として国内外の有識者とのネットワーク構築を中心に研究を実施した。特に、年度末の2月にワシントンDCで開催された学会(CRT)における日米HBDタウンホール、および同時に開催されたMDEpiNet-PPPシンクタンク会議への参加を予定して予算を作成したが、幸いにも米国側より研究成果発表およびプログラム作成に伴う旅費および学会参加費負担の申し出があり、その分を次年度使用額として有効活用する余地が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
三年目には、国際IMDRF会議が日本で開催されることから、海外から来日する研究者を国内学会や研究打ち合わせに招請し、循環器領域および整形外科領域における国際レジストリ連携の実践と、医療機関におけるUDIの意義研究に向け、研究目的の達成に向け研究費の適正使用を更に推進する。
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