本研究は、人間医工学(医療技術評価学)分野の中で、レギュラトリーサイエンスとして、医療機器イノベーションの推進と安全性確保を目的として、医療機関におけるUDIの意義について研究するものである。初年度の現状調査、2年目にProof of Conceptを計画、3年目からは国際ガイダンス文書の作成にも参画し、最終年度は国際医療機器レジストリ連携の先駆けとなる論文を発表することができた。 UDIは、ビッグ・データの時代を迎え、いわゆるリアル・ワールド・データ(RWD)の欠点として知られるバイアスや欠損値といった諸課題を解決し、リアル・ワールド・エビデンス(RWE)としてシグナル検出と具体的アクションに応用するための、戦略的レジストリ連携(sCRN)のコアとなる要素技術であり、既に米国FDAを中心とした国際医療機器規制当局フォーラム(IMDRF)で標準化された規格である。 従来、医療機関ではいわゆる患者カルテにおける指示と実施確認に加え、診療報酬請求、物流と在庫管理、患者トラッキング、医療安全、医療機器安全管理、副作用(不具合)報告、およびレジストリ(患者関連、手技関連、疾患関連)など、各部署それぞれで医療機器を識別しており、承認番号(DI)と製造番号(PI)からなるUDIのみならず、そのデータベース(GUDID)を標準化することで、医療機関では業務負荷軽減と医療の質向上の両立が期待できる。 既に米国では医療機器安全性ネット(MDEpiNet)を中心とした産官学連携で、UDIの臨床的意義および社会的意義を踏まえた戦略的レジストリ連携が進んでいる。 本研究の成果として、日米規制整合化(HBD)と連携した国際レジストリ連携J-MACSの論文は、先駆的事例としてMDEpiNet-Internationalで紹介され、IMDRFレジストリガイダンス(N33/N42)にも引用された。
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