研究課題/領域番号 |
25350586
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 公益財団法人日本分析センター |
研究代表者 |
畢 春蕾 公益財団法人日本分析センター, その他部局等, 研究員 (80647321)
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研究分担者 |
山口 友理恵 公益財団法人日本分析センター, その他部局等, 研究員 (30639977)
伴場 滋 公益財団法人日本分析センター, その他部局等, 研究員 (40544432)
大島 真澄 公益財団法人日本分析センター, その他部局等, 研究員 (40354815)
森本 隆夫 公益財団法人日本分析センター, その他部局等, 研究員 (40544359)
熊田 博明 筑波大学, 医学医療系, 准教授 (30354913)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | BNCT / BSH / BPA / LC/MS / 分離条件 / ホウ素同位体 |
研究概要 |
ホウ素中性子捕捉療法(Boron Neutron Capture Therapy, BNCT)において、治療効果を向上させるため、特に悪性脳腫瘍に対する近年の臨床研究では、取り込み機構の異なる二つのホウ素薬剤BSHとBPAを併用して腫瘍部のホウ素濃度を高める手法が実施されている。この場合は、照射による線量評価に10Bを標識した異なるホウ素化合物BSHとBPAを個別に測定することが必要とされている。本研究は血液中における二つのホウ素化合物に由来するホウ素同位体濃度の個別定量を目的とし、液体クロマトグラフ質量分析計(以下LC/MS)によるホウ素化合物(BSH、BPA)の分離条件・定量手法および高分解能ICP-MSによるホウ素同位体濃度の測定方法を検討し、10Bを標識したBSH、BPAに由来したホウ素同位体濃度の推定手法を確立することを目指す。 今年度の研究において、LC/MSによるBSHとBPAの混合標準溶液における目的成分の分離条件や定量手法の確立を目指して、LC/MS分析に最適な目的成分の溶解条件や分析条件などの検討を行った。移動相溶媒中にイオンペア試薬を添加し、水溶性の高いBSHと移動相溶媒中のイオンペア試薬と反応させることによって、逆相系分離カラムによるBSHとBPAの分離を可能とした。この測定法の最大の特徴は、BSHを誘導化させる必要がなく、試料準備の手間が大幅に減少し、且つ目的成分の分離・定量ができるという点が上げられる。また、高分解能ICP-MSによるホウ素同位体濃度の測定条件を確立するために、内標準法を用いたホウ素定量ための最適な内標準物質の選択やBPA におけるホウ素濃度および同位体比測定結果の再現性を確認した。これらの研究成果は、特にホウ素薬剤の悪性脳腫瘍への集積性等の評価、治療効果測定に不可欠であり、BNCTの治療効果の向上を図ることが期待できる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
LC/MSによる二つのホウ素化合物BSH、BPAの分離条件について、イオンペア試薬を利用して、極性の高いBSHと移動相溶媒中のイオンペア試薬と反応させることによって、逆相系カラムによるBSHとBPAの分離条件及び化合物の定量手法を確立した。この分離技術の確立により、患者血液(血漿)中におけるホウ素薬剤の濃度の個別推定手法の確立に繋がる。一方、高分解能ICP-MSによるBPA におけるホウ素濃度および同位体比測定法も確立した。 得られた研究成果は平成26年6月に開催される関連する国際学会(16thICNCT, Finland)にて発表する予定である。また、次段階の研究において、LC/MSの分析に適用できる血液(血漿)の前処理法の検討や標準溶液による確立した分析条件の血液(血漿)試料への適用性検討、またICP-MSによる迅速化・簡便化を図る血液の全分解前処理法の検討も順調に進めている。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度で得られた結果を踏まえ、平成26年度は主にBSH、BPAを含む血液(血漿)試料のホウ素濃度測定法の検討を行う。試料は市販で購入したヒトの血液(血漿)にBSHとBPAの標準溶液を添加したものを用いる。また、ホウ素薬剤を投与した動物から採取した血液の検討も視野に入れている。血液試料について、以下の検討を行う。 ①血液の前処理:血液試料を直接にLC/MSまたはICP-MSへ導入することは困難である。LC/MSへの導入のための血液前処理については、除タンパクの方法やその効果、定量における影響、回収率などについて検討する。前処理を行うことにより、妨害成分の除去による分析信頼性の向上、カラムの保護、感度の向上等が期待できる。また、ICP-MSへの導入のために、迅速化、簡便化を図る血液試料の全分解法について検討する。 ②血液試料への適用:LC/MSによるBSHとBPAの混合標準溶液を用いて確立した目的成分の分離条件や定量手法が血液(血漿)試料への適用性を検討する。また、ICP-MSによる血液試料におけるホウ素同位体濃度の測定法を検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度に繰り越しが生じた理由は、当初、購入する予定であった設備備品(電子天秤、窒素ガス発生装置、ICP-MS用アルゴンガスなど)は別途の経費で購入したためである。 平成26年度の研究費の使用計画について、主に消耗品関係、検討実験に用いる血液試料の購入費用などに使用する。また、取得した研究成果を関連する学会で発表するための国内・海外出張旅費に研究費を充てる予定である。 なお、科研費申請当初は、測定装置(LC/MSおよびICP-MS)は申請者の所属機関(千葉市)に設置していたが、平成27年度中に臨床研究を開始するための施設整備の一環として、上述の測定装置を平成26年1月にBNCTの研究施設である「いばらき中性子医療研究センター」(茨城県東海村)へ移設した。そのため、平成26年度以降の検討実験は上述場所で行うことになり、これに伴う旅費等にも使用する予定である。
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