研究課題
運動療法は心疾患や脳血管疾患に対するリハビリテーションとしてその有効性が一部明らかになっているが、その機序については不明な点が多く、個人最適化が確立していない。研究代表者は一貫して長期的有酸素運動の有効性の機序解明に取り組み、疾患モデル動物を用いて心臓や腎臓における一酸化窒素(Nitric Oxide: NO)系や酸化ストレス系の関与等を明らかにしてきた。本研究の目的は、降圧や臓器保護に重要な交感神経系に焦点をあて、NO系に加えて交感神経系の関与を解明することである。高血圧モデルとして高血圧自然発症ラット(SHR)を用いて、腎交感神経除神経処置および長期運動介入を行い、腎機能への影響と主にNOをターゲットとしてその機序解明を試みた。SHRを、偽手術群、除神経処置群、運動群、除神経処置+運動群の4群に分け、5週齢で除神経手術を行った。2週間後の7週齢から15週齢にかけて8週間、運動群にトレッドミル運動(20m/分、60分、5回/週)を施行した。収縮期血圧は、開始後2週間で偽手術群に比較して他3群が低値を示し、最終8週間後では、加えて除神経処置+運動群が除神経処置群と運動群より更に低値を示し、相加降圧効果が示された。8週間後の血漿および24時間蓄尿での尿の解析結果より、尿中アルブミン排泄量は、偽手術群に比較して他3群が低値、クレアチニンクリアランス値は、偽手術群に比較して他3群が高値を示し、両介入共腎機能改善効果が示唆されたが相加効果は認めなかった。その他、血漿および腎組織のノルエピネフリン濃度、NO系、酸化ストレス系、免疫組織化学的検討は現在解析中である。高血圧モデルでの除神経処置と長期的運動の有効性とその機序が明らかになることで、降圧および腎機能改善作用のサロゲートマーカーに用いた臨床研究での活用、腎臓を保護する運動療法のエビデンス確立への寄与が期待される。
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PLOS ONE
巻: 10 ページ: e0138037
10.1371/journal.pone.0138037