神経変性疾患が引き起こす運動障害と高次脳機能障害をリハビリテーション効果の観点から検討し、リハビリテーション効果が認められる症例の特徴を見出し、各々の症例に対するより有効なプログラムの構築に役立てることが本研究の目的である。 特発性パーキンソン病患者(Yahr3~4度)を対象とし、全例に神経内科専門医が神経学的診察を行うとともに,UPDRS、Mini-Mental State Examinationを施行した。高次脳機能障害について、運動学習や抑制機能などを含む前頭葉機能に関しては、Frontal assessment battery(以下,FAB)を用いて、運動機能の理学療法効果については、三次元動作解析装置・床反力計・動的重心動揺計・表面筋電図を用いて評価を行った。 理学療法前後で,静止立位の患者に前後方向に外乱刺激を加え、動的重心動揺計で重心移動を、三次元動作解析装置で体幹マーカーの移動を計測した。理学療法は、下肢・体幹の関節可動域訓練、立ち上がり訓練、バランス訓練、歩行訓練を約30分間施行した。 FABの結果をもとに,FAB高値群、低値群の2群に分け,理学療法即時効果を検討した。理学療法施行前後で比較すると、動的重心動揺計による検討では、両群ともに、総軌跡長、単位軌跡長、前後方向の軌跡長や移動速度の減少を認めたが、FAB高値群では、これに加えて、外周面積、前後方向の最大振幅・最大速度の減少を認めた。三次元動作解析装置による検討では、FAB高値群において、体幹マーカーの最大移動距離と前方・後方への最大速度の減少を認めた。 歩行障害について既に報告した理学療法効果とともに、前頭葉機能が保たれている症例で有意に理学療法効果が認められた。パーキンソン病患者の前頭葉機能障害が姿勢反射障害に対する理学療法即時効果に影響を及ぼしていると考えられた。
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