前年度に行った研究では、正常成人8名において最大筋収縮時磁気刺激(実刺激)、および最大筋収縮とプラセーボ刺激(偽刺激)による40分間の運動訓練前後で、ウェクスラー記憶検査の数唱、図形記憶テストを実施した。今年度はその変化について比較検討し、結果として偽刺激に対して実刺激では、刺激前に対して刺激後に数字の逆唱の点数が有意に増加し(p<0.05)、つまみ筋力も増強する傾向があった。他の検査では偽刺激と実刺激の間に有意差はなかった。以上から、最大筋収縮時磁気刺激は筋力と言語性記憶能力を向上させる可能性が示唆された。この結果は平成27年度に開催された第45回日本臨床神経生理学会学術大会において発表した。 今年度は、正常成人7名に対して最大筋収縮時磁気刺激(実刺激)、および最大筋収縮とプラセーボ刺激(偽刺激)による40分間の運動訓練前後で、つまみ筋力測定と右手母指球筋と第一骨間筋の運動誘発電位の記録、及び多感覚刺激(体性感覚と音刺激)事象関連脳電位の測定を行った。また、60歳以上の高齢者2名においても同様の検討を行った。事象関連脳電位の計測は、岡山大学自然科学研究科生態計測工学研究室の協力を得て実施した。結果として、多感覚刺激による事象関連脳電位から単感覚刺激による事象関連脳電位を差分した成分には両群で大きな違いはなかったが、事象関連脳電位各成分の違いについては更に統計的分析を行い、平成28年開催の日本神経学会、複合医工学国際会議、日本臨床神経生理学会で発表予定である。
|