研究実績の概要 |
生体部分肝移植術(LDLT)後は,肝代謝合成機能が術前よりさらに低下するため,骨格筋においては廃用性萎縮による筋力低下が惹起され,ADLの低下から活動量がさらに低下する悪循環に陥る.そのため,電気刺激療法(NMES)を用いた筋収縮運動が,LDLT後の患者において筋力維持および増強に有用であるかを検討することである.LDLT手術予定の患者に対して,術前より身体機能として握力,下肢筋力,超音波検査による大腿四頭筋の筋厚,運動耐容能として6分間歩行試験を行い,ADL,QOLについても評価した.術後も1ヵ月後,3ヵ月後に同様の評価により効果判定を行った.無作為にNMES群とコントロール群に大別して行った.NMES 群は刺激部位を大腿四頭筋とし,刺激強度45Hz; 400-μs (通電時間12 秒,休止時間6 秒,強度40-80mA), 実施時間を1 セッション30分間を2セッション, 実施頻度は,週に5 回以上で施行した.コントロール群は,shamとして刺激部位を前頸骨筋とし,同様の刺激強度,頻度で行い,時間は1セッションとした.脱落例もあり症例数は少ないが,術前からの変化率において握力(NMES群vsコントロール群:-9.3% vs -20.6%, p=0.199)および下肢筋力(-37.2% vs -42.1%, p=0.414),大腿四頭筋の筋厚(-18.5% vs -20.3%, p=0.940)であった.術後1ヶ月においては両群間に有意差は認めなかったものの,それぞれにおいてコントロール群の低下率が大きい傾向にあった.ADLにおいて有意差は認めず,大腿四頭筋の筋厚の減少率は少なかったことから,EMSによる刺激で筋萎縮の進行抑制効果は得られている可能性があることが示唆された.
|