研究課題/領域番号 |
25350611
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 横浜市立大学 |
研究代表者 |
若林 秀隆 横浜市立大学, 大学病院, 助教 (80508797)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | サルコペニア / 栄養 / リハビリテーション / サルコペニア肥満 |
研究概要 |
変形性股関節症で人工股関節置換術を施行した患者の筋肉量、筋肉濃度、内臓脂肪量、サルコペニア肥満を調査した。 対象は2007年4月から2013年3月に当院にて変形性股関節症で人工股関節置換術を施行し、術前に骨盤CT検査を施行した患者148人。第4腰椎レベルの両側大腰筋の筋肉面積とHounsfield Unit(以下、HU)をスライスオマティックスで、臍部レベルの内臓脂肪面積をヴィンセントでそれぞれ計測した。 平均年齢67歳、男性15人、女性133人。平均BMIは男性26.0、女性23.6。BMI25以上は男性6人(40%)、女性37人(28%)。大腰筋の平均筋肉面積は男性19.59±5.63cm2、女性11.27±2.67cm2であった。25パーセンタイルである男性15.38cm2、女性9.72cm2以下の場合を今回、サルコペニアと判定した。平均HUは男性41.19±9.72、女性36.01±9.09であった。BMI25未満でHU41未満、BMI25以上でHU33未満と、がんの先行研究でリスクとされるHUに該当したのは、男性3人(20%)、女性81人(61%)であった。大腰筋の筋肉面積、HUと、退院時の腸腰筋の徒手筋力テスト、歩行能力に有意な関連を認めなかった。平均内臓脂肪面積は101.76±60.71cm2で、内臓脂肪面積100cm2以上は、男性10人(67%)、女性55人(41%)であった。サルコペニア肥満に該当したのは、BMI25以上とした場合、男性2人(13%)、女性5人(4%)、内臓脂肪面積100cm2以上とした場合、男性1人(7%)、女性12人(9%)であった。内臓脂肪面積でサルコペニア肥満の場合、病棟から機能訓練室の移動手段が退院時に車椅子のことが多い傾向にあった(p=0.105)。 サルコペニア肥満の場合、術後の身体機能と関連する可能性がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
サルコペニアの診断に必要な筋肉量低下の日本人基準値として、大腰筋の筋肉面積が男性15.38cm2以下、女性9.72cm2以下の場合を作成できた。先行研究で健常者の大腰筋の平均筋肉面積が、第3腰椎レベルで男性20.6±8.8cm2、女性11.1±2.7cm2という報告がある(Yoshizumi T, et al: Skeletal muscle area correlates with body surface area in healthy adults. Hepatol Res. 2014;44:313-8.)。この数値と比較すると男性-0.6標準偏差(SD)以下、女性-0.5SD以下の場合にサルコペニアとなる。 サルコペニアにおける筋肉量減少の診断基準として若年の2SD以下が使用されることが多い。しかし、先行研究の2SD以下を筋肉量減少とすると、大腰筋の筋肉面積のカットオフ値が男性3.0cm2、女性5.7cm2となり、筋肉量減少の該当者がほとんど0となってしまう。そのため、これより今回の研究で得られた男性15.38cm2以下、女性9.72cm2以下のほうがより適切と考える。
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今後の研究の推進方策 |
食道癌で入院リハビリテーションを行っている患者を対象に、サルコペニアの有病割合を明らかにする。同時に摂食・嚥下障害の有無、重症度とサルコペニアの有無の関連を横断研究で検討する。さらにサルコペニアの有無による摂食・嚥下障害とADLの機能予後を、前向きコホート研究で明らかにする。 筋肉量減少の評価には、腹部CTの大腰筋の筋肉面積とHounsfield Unit(以下、HU)を用いる。摂食・嚥下障害の有無と重症度はEAT-10(Eating Assessment Tool-10)とFOIS(Functional Oral Intake Scale)で評価する。ADLの機能予後はBarthel Indexで評価する。 仮説として、食道癌でサルコペニアを認める場合、摂食・嚥下障害を認める割合が高く重症度が重いと考えている。食道癌が進行しているほど、サルコペニアと摂食・嚥下障害を認める割合が高くなると推測する。また、リハビリテーション終了時の摂食・嚥下障害の重症度とADLの予後が悪いと考える。つまり、食道癌における摂食・嚥下障害の原因の1つがサルコペニアであるという仮説である。
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