研究概要 |
平成25年度は,熟達した音声障害音声(嗄声)の評価者は,どのような音響パラメータに注目して嗄声を評価しているのかや熟達者と初心者との違いについての検討を中心に研究を進めた. 嗄声の聴覚心理的評価値と音響パラメータの関係を検討するためにさまざまな重症度の嗄声40症例について嗄声の重症度と比較的相関が高いとされているAPQ, PPQ, SP, JP, NNEa, NNEb, HNRおよび, 騒音や異音の聴覚心理的評価と対応が良いとされているラフネス, シャープネスの9種類の音響パラメータを音響分析により求めた.さらに,音響分析に用いたものと同一の嗄声40症例について聴覚的心理評価の経験がある言語聴覚士(ST)とSTを目指す学生にはGRBAS尺度と尺度法による評価を,未経験者には尺度法により評価を行わせた.ここで,被験者として協力を得たSTは61名,STを目指す学生は79名,未経験者,20名であった. 嗄声の聴覚心理的評価実験の結果から,ST経験5年以上の被験者を熟達者群,ST経験5年未満の被験者とSTを目指す学生を初心者群,未経験者を未経験者群の3群に分けてどのような音響パラメータに注目して嗄声を評価しているのかや熟達者群と初心者群との違いについての検討を行った. 検討の結果,尺度法による評価では,全ての被験者群において音響パラメータNNEbとシャープネスが最も大きな評価手がかりになっていることや嗄声評価経験年数が長くなるほど音響パラメータの僅かな違いでも適切な評価ができるようになっている可能性が示唆された.また,GRBAS尺度による嗄声評価では,評価項目RやBにおいて熟達者群は初心者群に比べ,より多くの音響パラメータに注目して評価を行っている可能性があることや初心者群は,熟達者群に比べ音響パラメータの変化に対して過大評価をする傾向があることが示唆された.
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