研究実績の概要 |
<背景>低出力パルス超音波療法(LIPUS)は、創傷治癒を促進を図る治療法である.本研究では、筋損傷に対するLIPUSの効果と作用機序を検討することを目的に、2種類の照射条件を設定し、組織学的・生化学的に解析した. <方法>動物はICR系雌マウス(12週齢)を用い、損傷のみを与える筋損傷群、筋損傷後にLIPUSを10分照射するLIPUS-10群、筋損傷後にLIPUSを20分照射するLIPUS-20群の3群に分けた。またコントロールとして無処置のマウスを使用した. LIPUS実施条件は周波数3MHz,強度0.5W /平方cm,照射時間率50%,照射時間は10分もしくは20分とし,損傷後2時間時に1回目の照射,2回目以降は1回/日,7回/週の頻度で実施した.筋損傷は左前脛骨筋にカルジオトキシンを注入して作成し, 損傷3, 5, 7日後に前脛骨筋を採取した.筋線維横断面積は損傷7日後で評価し、損傷3日、5日後の筋ではAktおよび70-kDaリボソームS6キナーゼ(p70S6K)の発現量およびリン酸化比について解析した. <結果・考察>損傷7日後の平均筋横断面積は、筋損傷群、LIPUS-10群、LIPUS-20群の3群間で有意差はなかった。筋線維横断面積の分布をみると、LIPUS-10群・LIPUS-20群は、筋損傷群より筋横断面積が大きい線維の割合が高かった.損傷3日、5日後のリン酸化Aktの発現は、3群すべてが無処置群よりも増加していたが、3群間の有意差はなかった。p70S6Kリン酸化比は、損傷3日後では3群間に有意差はなかったが、損傷5日後において筋損傷群よりLIPUS-10群で有意に高かった.以上より、損傷筋に対するLIPUS照射は、タンパク合成を高め、筋再生を促進することが示唆された。また本研究でみられたp70S6Kの活性化はAktに非依存的に生じることが推測された.
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