平成29年度は、脳損傷後に運転能力評価を行い、そして、実車運転への手順を構築した。すなわち、まず、安全運転のための必要条件(医学的に安定 、日常生活の自立、障害の理解、代償方法を習得、感情面の安定)が備わっていることを確認し、次いで、脳MRI所見から、左右の大脳半球、特に両側前頭葉、右頭頂葉に損傷があっても、限局し小病変であることを確認する。広く大脳皮質が損傷されている例では運転はできない。ついで、神経心理学的検査を行い、基準値を概ね下回ってないことを確認する。そして、以上の条件が満たされた場合に、教習所にて実車運転能力の評価を依頼する。これらを通して、運転能力の適否を評価することにしている。自動車教習所との連携は、on-the-road評価として、off-the-road評価にて運転に支障をきたす重大な障害がない場合に、off-the-road評価に続いて行われる。医療機関は、教習所との綿密な打ち合わせの後、役割分担、責任の所在を明確にする。運転再開においては、運動障害および高次脳機能障害が阻害要因となることから、詳細な評価が必要であり、運転再開が可能な場合は、丁寧な指導が求められる。 以上の手順を構築し、実際に運転を希望する脳損傷患者を対象に、データを集計し、学会発表、論文作成を行った。
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