研究目的は、①”ニューロイメージングによる脳機能評価に基づいたニューロリハ戦略策定”と②”各々単独で用いられてきた中枢神経刺激と末梢の機能的電気刺激の併用による脳神経の機能的再構築に対する相乗効果の検討”、の二本柱で構築される。 中枢神経への直接アプローチであるt-DCSを用いて脳神経細胞を賦活し可塑的変化を惹起したうえで、さらに末梢の標的筋からのアプローチ(随意運動介助型機能的電気刺激:IVES)を併用する。時間分解能に優れた課題遂行時の脳血流状態は近赤外光脳機能測定装置(NIRS)を用いて脳機能を評価し、有機的に脳機能再構築を促す基礎情報として活用し、ニューロリハの計画策定に役立てる。NIRSを用いた脳機能画像情報を利用して、t-DCSを障害側大脳皮質の賦活に用いるのか、非障害側大脳皮質の抑制を介してtrans-carosal disinhibitionとして用いるのかの判断材料として有用性を明らかにした。IVESによる末梢からの脳賦活による感覚運動統合作用に加え、t-DCSによる中枢への直接的な脳賦活作用との相乗効果により、単独のinterventionよりも優れた相乗効果を得られるハイブリッド・ニューロリハの有用性が認められた。ハイブリッド・ニューロリハを施行した前後で、障害側大脳皮質感覚運動野が賦活されるとともに、上肢手指巧緻運動性の改善が認められた。また、t-DCSによる中枢への直接的な脳賦活作用には、個人差が大きいことも明確になった。 Hybridなニューロリハ手法は、従来は回復困難であった難治性の上肢麻痺の機能回復を促すことで障害者にとって著しい福音となる可能性が示唆され、障害者の社会参加に貢献できる可能性がある。
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