研究課題
頭皮上に設置した電極から流れる微弱な直流電流が,頭蓋骨を通過し,電極直下の興奮性が変化する.これは,経頭蓋直流電流刺激(tDCS)と呼ばれ,非侵襲的な脳機能の探索ツールとしてばかりでなく,様々な中枢神経系疾患患者の治療にも使用されている.一般的にtDCSでは,陽極(陰極)刺激の場合,陰極(陽)電極は対側前額部に設置される.これは,この部位からの同側または対側M1に対する直接投射がないことから,陽極(陰極)電極直下の興奮性にほぼ影響を及ぼさない基準電極としての位置に適しているからである.一方,脳卒中患者に対して病側半球に陽極電極を,非病側半球に陰極電極を設置して両側半球を同時に刺激するtDCS(Dual-tDCS)による運動機能回復効果は,従来の一側半球に対するtDCS(Uni-tDCS)より高いと報告されて以来,新たな電極設置モンタージュとして注目を集めている.本研究最終年度では,非利き手による視標追跡描円課題の精度における改善効果は,従来型片側半球tDCSより,近年注目されている両側半球tDCSの方が優れているのか否かを検証した.14名の右利き健常成人被験者がtDCS前後に非利き手である左手で視標追跡描円課題を行い,その前後の課題遂行精度を比較した.tDCSは,右M1陽極-左M1陰極刺激(Dual-tDCS),右M1陽極-左前額部陰極刺激(Uni-tDCS),Sham-tDCSの3条件とした.逸脱した運動の指標であるX,Y,Z方向の加速度スペクトル和はSingle-tDCS条件においてのみ,それぞれ有意に減少した.シークエンス・タッピング課題や二点弁別課題におけるDual-tDCSの優位性を示す先行研究とは異なる結果を示した.視覚刺激処理過程を含む上肢巧緻動作の精度向上には,必ずしもDual-tDCSが優れているとは限らないことが示唆された.
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