研究課題/領域番号 |
25350634
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研究機関 | 帝京科学大学 |
研究代表者 |
萩原 宏毅 帝京科学大学, 公私立大学の部局等, 教授 (80276732)
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研究分担者 |
真先 敏弘 帝京科学大学, 公私立大学の部局等, 教授 (00585028)
斉藤 史明 帝京大学, 医学部, 准教授 (40286993)
廣瀬 昇 帝京科学大学, 公私立大学の部局等, 准教授 (60460391)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | サーチュイン 1 / レスベラトロール / 筋萎縮筋原性制御因子 / 線維化 / オステオポンチン |
研究実績の概要 |
レスベラトロールは天然由来のポリフェノールの一種で、ヒストン脱アセチル化酵素で長寿関連遺伝子として知られる SIRT1(サーチュイン1)の特異的活性化剤である。本研究は、レスベラトロールの筋萎縮に対する長期的効果を検討することを目的としている。このことを明らかにするため、筋萎縮を呈する代表的な病態であるミオパチーの一種、メロシン欠損型先天性筋ジストロフィー (MDC1A)のモデルdy-2Jマウスに、レスベラトロール4g/kgを離乳直後から食餌に混ぜて投与し、1年以上にわたりその体重、筋力、活動量、寿命に対する長期的な効果をみた。また、生検筋の病理組織学的解析を行った。さらに、レスベラトロール摂取が遺伝子発現に与える影響を、マイクロアレイ法を用いて網羅的に解析した。これらの解析から、レスベラトロールの作用機序の検討を行った。その結果、レスベラトロールを投与した群は、対照群と比較して寿命が長かった(投与群=58週、対照群=42週)。また、投与群では、20週齢以降の体重、筋力、活動量の低下が軽度であった。骨格筋組織学的検討では、投与群は対照群に比較して細胞が大きく、線維化の軽減がみられた。マイクロアレイでは、Sirt1関連遺伝子や筋原性制御因子 (MRFs)の発現に大きな変動はなかった。一方、線維化に関連する collagenや matrix metallopeptidase (MMP)群の遺伝子に大きな変動が認められた。さらに、オステオポンチン (osteopontin)の発現が約 4倍変化していた。以上の結果から、レスベラトロールが線維化を改善し、筋ジストロフィー症状の進行を抑制することが示唆された。その機序として、osteopontinを介する経路が関与している可能性が考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ミオパチーモデルマウス(dy-2Jマウス)にレスベラトロールを投与し1年間以上長期間飼育して筋萎縮に対する効果を検討した(加齢性筋萎縮モデル)。それにより、レスベラトロールが線維化を改善し筋ジストロフィー症状の進行を抑制することを明らかにした。このように、研究予定はほぼ計画通り解析が進んでいるため、おおむね順調と評価した。次年度は、このレスベラトロールの作用機序をより多角的に検討し解明したい。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、レスベラトロールの詳細な作用機序を解明し、成果を論文にまとめて投稿することを目指したい。合わせて、研究実施計画で予定した運動制限をかけた条件(廃用性筋萎縮モデル)でのレスベラトロールの効果についての評価も継続する。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度は、昨年度に購入した物品で主な解析を行なったため、50万円を越える高額な物品は購入しなかった。また昨年度の未使用額もあり、さらに、もう一つの条件(廃用性筋萎縮モデル)でも同様の実験を行うための額を考慮して残しておく必要があった。このような理由から上記の次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度は、レスベラトロールの作用機序を、免疫組織化学、リアルタイム PCR等でより多角的に検討する予定である。次年度使用額と次年度分助成金は、これらの検討を行うための抗体の購入や受託のために使用する計画である。
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