研究実績の概要 |
長時間感覚閾値程度の電気刺激を末梢神経に与えるという方法(peripheral nerve sensory stimulation, PSS)で、運動野の興奮性が増大することが近年明らかにされた。一方、嚥下障害に対する治療的な電気刺激の効果に関しては、一定の見解が得られていない。われわれは、われわれは,PSSが嚥下機能に対して与える影響を検証した。健常人5名と嚥下障害患者1名を対象に、電気刺激装置(ES-360、伊藤超短波)を用いてPSSを行った。刺激部位は、頸部前面の皮膚表面とした。刺激強度は、感覚閾値程度とし、刺激周波数は50Hz(15秒連続刺激、2秒休止)で20分間とした。評価は、電気刺激前、20分後、40分後、60分後に行った。評価方法は、(1)30秒間に可能な嚥下回数を測定し(RSST)、さらに(2)鼻腔から挿入したチューブから水を5分間持続的に注入し(3ml/min)、自然嚥下が生じる回数を記録した。結果は、自然嚥下回数が増加したが、RSSTは不変であった。 また健常人を対象に、320列CTを用いて、嚥下中の舌骨筋群、咽頭筋群の筋長変化を評価した。嚥下反射時に起こる最初の変化として、茎突舌骨筋、顎舌骨筋、顎二腹筋後腹の短縮が起こり、続いて咽頭筋群の収縮、最後に顎二腹筋前腹とオトガイ舌骨筋の短縮が観察された。輪状咽頭筋ブロックに関しては、長期フォロー可能な例に関してVF等を用いて解析し、症例によっては6ヶ月以上の効果の持続が確認された。四肢痙縮筋に用いるボツリヌス毒素治療に比べて、作用期間が長いことが示唆された。
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