本研究の目的は脳卒中患者の理学療法や作業療法といった,いわゆるフォーマルセラピー以外の訓練時間とADL予後との関連について分析した.本邦の回復期脳卒中患者では診療報酬上のリハビリテーション(リハ)の上限時間は1日最大3時間である。一方、米国のガイドラインでは本格的なリハ適応は1日3時間のリハに耐えられる患者が最低の基準となっている。つまり、本邦の最大が米国の最低基準であり、この違いは大きい。また、訓練時間以外の活動量増加が日常生活活動(ADL)向上に寄与しているとした報告もあり、訓練量に制約のある本邦では、特に訓練時間以外の介入が重要である。しかし、訓練時間以外の介入に着目した研究は少ない。本研究では多施設参加型の脳卒中リハ患者データバンクに登録されている、回復期リハ病棟患者1233名を対象に訓練時間以外の介入である、自主訓練および病棟スタッフ訓練と退院時ADLとの関連を検討した。本研究の新知見と意義は要約すると次のとおりである。1.退院時FIM運動を従属変数とした決定木分析の結果、入院時FIM運動が高位層(57点以上)では、説明変数として入院時FIM認知が選択された。この高位層では約70%が退院時には自立したADL(FIM運動80点以上)を獲得しており、自立したADL獲得には認知機能が重要であると考えられた。2.退院時FIM運動を従属変数とした決定木分析の結果、入院時FIM運動が低位~中位層(56点以下)の患者では自主訓練および病棟スタッフ訓練の両方実施か少なくとも自主訓練の実施が退院時ADL向上に寄与している可能性が示された。 また,急性期の患者1490名をpropensityを用いて自主訓練実施群と非実施群の背景を調整し,退院時ADLとの関係性を分析し自主訓練実施が有効である可能性を示した.
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