研究課題
基盤研究(C)
骨格筋は可塑性に富んだ器官であり、細胞外刺激に適応して構造的・機能的に変化する。種々の物理的刺激によって骨格筋量と機能の維持向上がもたらされる際に、熱ショックタンパク質(Heat shock proteins:HSPs)の発現も増加することが報告されている。骨格筋の量的・機能的適応にHSPsが関与している可能性が指摘されているものの不明な点が多い。本研究では、哺乳類骨格筋においてHSPs発現を制御している熱ショック転写因子1(heat shock transcription factor 1:HSF1)の機能に着目し、HSF1欠損(HSF1-knock out:HSF1-KO)マウスを用いて、物理的刺激による骨格筋応答およびHSPs発現の変化を追及する。そして、機械的刺激、温熱刺激など物理的刺激による骨格筋の量的かつ機能的応答におけるHSPsの役割を解明する。本研究は3年計画で実施され、本年度はその1年目に当たる。本年度の検討項目は、機械的刺激後の骨格筋応答とHSPs発現との関係とした。実験対象の筋組織には、HSF1-KOマウスと野生型マウスのヒラメ筋を用いた。マウスに機械的刺激(ヒラメ筋の協働筋である腓腹筋を切除し、ヒラメ筋に対して過剰な機械的刺激を継続的に負荷する)を加え、骨格筋量、Pax7陽性筋衛星細胞数、HSPs発現量の変化を評価した。HSF1-KOマウスの骨格筋量の増加率は、野生型マウスと比較して有意に低値を示した。野生型マウスのPax7陽性筋衛星細胞は実験期間中早期に増加が認められた。また、HSPsの応答は一様でなく、HSPs毎に異なる経時的変化を示した。また、HSF1-KOマウスのHSPs発現量ならびに変化は、野生型マウスと比べて少ない傾向が認められた。以上より、機械的刺激による骨格筋肥大の一部にHSF1を介したストレス応答が関与していることが示唆された。
2: おおむね順調に進展している
本年度の検討項目は、機械的刺激後の骨格筋応答と熱ショックタンパク質(Heat shock proteins:HSPs)発現との関係である。これまでの検討により、熱ショック転写因子1欠損(heat shock transcription factor 1-knock out:HSF1-KO)マウスと野生型マウスを用いて、機械的刺激による骨格筋肥大における筋衛星細胞ならびにHSPsの変化を確認し、HSF1を介したストレス応答の影響を確認した。以上より、本研究課題はおおむね順調に進展している。
本研究は3年計画で実施され、平成26年度はその2年目に当たる。本実験を実施するに当たり必要な設備・備品は現有のものを使用し、補助金は主として、実験動物ならびに動物の飼養に関わる消耗品の購入や分析に必要な試薬などの消耗品の購入に充てる。なお、平成26年度の計画に動物実験を含んでいるため、豊橋創造大学・実験動物飼育管理研究施設動物実験実施指針に従い、「豊橋創造大学遺伝子組換え動物実験安全委員会」ならびに「豊橋創造大学動物実験委員会」による審査・承認を経て実施する。これまでの検討により、機械的刺激による骨格筋肥大の一部に熱ショック転写因子1(heat shock transcription factor 1:HSF1)を介したストレス応答が関与していることが示唆された。そこで本年度の検討項目は、HSF1の欠損が温熱刺激後の筋衛星細胞活性ならびに骨格筋量に与える影響とする。実験対象の筋組織には、熱ショックタンパク質(Heat shock proteins:HSPs)発現を制御している熱ショック転写因子1のノックアウトマウス(HSF1-knock out(HSF1-KO)マウス)と野生型マウスのヒラメ筋を用いる。HSF1-KOマウスと野生型マウスを使用し比較することで、温熱刺激に対するHSF1ならびにHSF1を介したストレス応答と骨格筋の量的適応の関係を明らかにする。HSF1-KOマウスは所属施設で繁殖・飼養されている。HSF1-KOマウスの作成における遺伝子型の判定にはPCRを用いる。マウスに温熱刺激(38℃以上かつ45分間以上)を負荷し、温熱刺激後の骨格筋量(筋重量、筋タンパク量)の変化を評価する。また、温熱刺激後の骨格筋組織中の筋衛星細胞の挙動を、免疫組織染色法により評価する。さらに、HSF1の欠損が温熱刺激後の骨格筋量ならびに筋衛星細胞活性に与える影響について、得られた結果を取りまとめ、成果の発表を行う。
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http://www.sozo.ac.jp/professor/goto_katsumasa/index.html