研究課題
骨格筋は可塑性に富んだ器官であり、細胞外刺激に適応して構造的・機能的に変化する。種々の物理的刺激によって骨格筋量と機能の維持向上がもたらされる際に、熱ショックタンパク質(Heat shock proteins:HSPs)の発現も増加することが報告されている。骨格筋の量的・機能的適応にHSPsが関与している可能性が指摘されているものの不明な点が多い。本研究では、哺乳類骨格筋においてHSPs発現を制御している熱ショック転写因子1(heat shock transcription factor 1:HSF1)の機能に着目し、HSF1欠損(HSF1-knock out:HSF1-KO)マウスを用いて、物理的刺激による骨格筋応答およびHSPs発現の変化を追究する。そして、機械的刺激、温熱刺激など物理的刺激による骨格筋の量的かつ機能的応答におけるHSPsの役割を解明する。本研究は3年計画で実施され、本年度はその2年目に当たる。本年度の検討項目は、温熱刺激後の骨格筋応答とHSPs発現との関係とした。実験対象の筋組織には、HSF1-KOマウスと野生型マウスのヒラメ筋を用いた。マウスに温熱刺激(41℃、60分間)を負荷し、骨格筋量、Pax7陽性筋衛星細胞数、HSPs発現量の変化を評価した。野生型マウスの骨格筋量とPax7陽性筋衛星細胞数は温熱刺激後に増加したが、HSF1-KOマウスでは変化を認めなかった。したがって、HSF1の欠損は温熱刺激による骨格筋肥大を抑制させることが示唆された。また、温熱刺激後のHSPsの応答は一様でなく、野生型マウスにおいてHSP70ファミリー(HSP72、HSP110)の発現量が増加した。HSP25の発現量は両マウスにおいて増加が認められた。以上より、温熱刺激による骨格筋肥大には、HSF1あるいはHSF1依存性のストレス応答が寄与していることが示唆された。
2: おおむね順調に進展している
本年度の検討項目は、温熱刺激後の骨格筋応答と熱ショックタンパク質(Heat shock proteins:HSPs)発現との関係である。これまでの検討により、熱ショック転写因子1欠損(heat shock transcription factor 1-knock out:HSF1-KO)マウスと野生型マウスを用いて、温熱刺激による骨格筋肥大における筋衛星細胞ならびにHSPsの変化を評価し、HSF1を介したストレス応答の影響を検討した。その結果、HSF1の欠損は温熱刺激後のHSP70ファミリーの誘導を抑制するだけでなく、筋衛星細胞数の増加ならびに骨格筋量の増加も抑制することを確認した。以上より、本研究課題はおおむね順調に進展している。
本研究は3年計画で実施され、平成27年度はその3年目の最終年度に当たる。これまでの検討により、機械的刺激ならびに温熱刺激による骨格筋肥大の一部に熱ショック転写因子1(heat shock transcription factor 1:HSF1)を介したストレス応答が関与していることが示唆された。そこで本年度の検討項目は、培養骨格筋細胞を対象に、神経内分泌系の関与がない環境における、温熱刺激後の骨格筋応答における熱ショックタンパク質(Heat shock proteins:HSPs)の役割とする。また、HSPs発現の誘導が局所的な温熱刺激により引き起こされるかを明らかにする。実験対象には筋細胞と筋組織を用いる。筋細胞はマウス骨格筋由来筋芽細胞C2C12を用い、温熱刺激後の筋タンパク質量、HSPs発現量、タンパク質合成に関わるシグナル伝達因子であるAktやp70 S6 kinaseの応答を明らかにする。また、筋組織はHSPs発現を制御している熱ショック転写因子1のノックアウトマウス(HSF1-knock out(HSF1-KO)マウス)と野生型マウスのヒラメ筋を用い、HSF1ならびにHSF1を介したストレス応答が温熱刺激後のタンパク質合成に関わる細胞内シグナル伝達物質に与える影響を検討する。さらに、温熱刺激後の骨格筋応答におけるHSPsの役割について、得られた結果を取りまとめ、成果の発表を行う。
すべて 2014 その他
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 1件、 謝辞記載あり 2件) 学会発表 (4件) 備考 (1件)
Physiological Reports
巻: 2 ページ: e12259
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物理療法科学
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http://www.sozo.ac.jp/professor/goto_katsumasa/index.html