研究課題/領域番号 |
25350644
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研究機関 | 星城大学 |
研究代表者 |
越智 亮 星城大学, リハビリテーション学部, 講師 (60410891)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 高齢者 / 転倒 / ステップ / 体幹 / 筋電図 |
研究実績の概要 |
つまずき等の転倒のきっかけの後,下肢を大きく踏み出すこと(以下,ステップ)で転倒を回避できるが,高齢者ではステップ後に不安定となり,実際の転倒に発展し易い.本研究の目的は,体幹の筋力や外乱に対する安定性を改善させる機能的トレーニングが,易転倒性のある高齢者のステップ動作を改善させ,転倒予防に効果があるか検証することである. 今年度は,転倒リスクのある高齢者とリスクのない健常高齢者において体幹の筋力に違いがあるかどうか,また体幹筋および大殿筋の筋力増強トレーニングが転倒回避ステップのパフォーマンスを改善するかどうか調査した.転倒回避ステップの誘発には,被験者の腰部を牽引した状態で身体を前傾させておき,牽引が離れた瞬間から下肢を一歩前に踏み出す方法を用いた.同方法によるステップ時,単一ステップでバランス回復できたものを転倒リスクなし群11名,複数回ステップでバランス回復したものを転倒リスクあり群8名とした.結果,転倒リスクなし群とあり群で体幹伸展筋力に差はなかった.一方,ステップ着地時の体幹伸展筋における筋電図活動量は転倒リスクあり群がなし群に比べて有意に小さかった.転倒リスクあり群8名に対し,6週間の体幹機能トレーニングを実施させた.体幹伸展筋力はトレーニング後に15%向上した.複数回ステップから単一ステップに変化したものは8名中2名であった.体幹筋力が向上したものの,ステップ着地時の体幹伸展筋の筋電図活動量はトレーニング前と比べて有意な増加が認められなかった. 転倒回避ステップのパフォーマンスを改善するには,体幹筋力の向上だけでなく,体幹筋において適切なタイミングに強く筋出力させる協調性の機能を向上させる必要があることが示唆された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成26年度に明らかにすることは計画調書の通りに進展した.しかし,対象者数が十分でないことから,得られたデータの再現性,信頼性に疑念がある.また,対象者に用いたトレーニング内容の良し悪しも十分に検討できていない.
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度は対象者数を増やす予定である. 研究実績の概要で記載した学会発表の知見から,筋の収縮と弛緩の素早い繰り返し運動は筋の協調性を改善させることが理解できた.これを基に,平成26年度に行った体幹の機能的トレーニング内容に,体幹筋の協調性を向上させる内容を加える.なお,体幹の機能的トレーニング内容についてはすでに内容が決定している. 平成26年度は6週間と短いトレーニング期間であったにも関わらず,対象者の介入に対するモチベーションが上がらなかったように思われる.トレーニング内容の分かり易さと取り組みやすさを考慮しなければならない.
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次年度使用額が生じた理由 |
研究被験者,その他,研究協力員への謝金が発生しなかったため.また,研究消耗品等の物品を計画書よりも安く購入できたことによる.
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次年度使用額の使用計画 |
26年度未使用額は,27年度4月末の国際学会の出張費に流用した.未使用額の一部は,研究で使用している表面筋電計の購入に充てる.購入した機器を用いて不足分のデータを収集し,論文作成時の英文校閲代に充てる.
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