研究課題/領域番号 |
25350655
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研究機関 | 九州看護福祉大学 |
研究代表者 |
加藤 浩 九州看護福祉大学, 看護福祉学部, 教授 (90368712)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 体節間浸透力 / 力学的エネルギー |
研究実績の概要 |
本研究の目的は,歩行時の下肢体節間の力学的エネルギーの流れを詳細に定量化し,当該特性について関節モーメント及び,筋電図学的側面から検討することである.本年度の実績としては,昨年度に構築した,力学的エネルギー算出プログラムを用いて,健常者と変形性股関節症(OA)患者を対象に歩行時の力学的パラメータの計測を実施し,両者の特徴について検討を加えた.その結果,股関節パワーは,OA患者が負のパワー,健常者が正のパワーを示した.そのためOA患者では股関節伸展モーメントを発揮している筋は遠心性収縮(骨盤前傾運動)であることが分かる.さらにこの時の体節間浸透力パワーをみるとOA患者の場合,骨盤遠位は正のパワー,大腿近位は負のパワーであることから,大腿から骨盤への力学的エネルギーの流れが生じたと考えられた.これに対して健常者の場合,大腿近位の体節間浸透力パワーは,極めて低値を示しており,大腿部からの力学的エネルギーの流れは殆ど生じていないと考えられた.つまり,OA患者の場合,骨盤前傾運動により大腿から骨盤への力学的エネルギーの流れを得ることで股関節伸展モーメントを作り出していることが示唆された.同様に膝関節においては,健常者,OA患者共に下腿から大腿への力学的エネルギーの流れが生じていることが示された.足関節においては,健常者の場合,足部から下腿への力学的エネルギーの流れが認められたのに対し,OA患者では逆の流れが認められた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
下肢荷重関節(股関節・膝・関節・足関節)を対象とした力学的エネルギー計算プログラムは完成した.そして,実際に3次元動作解析装置を用いて,関節中心座標・速度,セグメント角度・角速度,関節モーメント,体節間浸透力を算出した.力学的エネルギーは上記の体節間浸透力によるエネルギー変化(体節間浸透パワー)と関節モーメントによるエネルギー変化(筋パワー)を算出し,両者の合成パワーが歩行時のエネルギー連鎖の指標としている.健常者データは10名.OA患者データは1名の計測が終了した.
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今後の研究の推進方策 |
本年度はOA患者データを10名程度,取り込んで解析する予定である.さらに表面筋電図解析も合わせて行い,離散WT周波数解析を用いた量的・質的活動評価を行う.そして,力学的エネルギー伝達と筋活動の関連性についての検討を進める予定である.
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次年度使用額が生じた理由 |
Visual 3Dを購入予定であったが,他の研究機関で使用させて頂くことができ,購入しなかったため予算が余る結果となった.
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次年度使用額の使用計画 |
本年度はエネルギーの流れに加えて,筋張力推定を実施するため,これに関連する解析ソフトの購入を検討し発展的に研究を進める予定である.
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備考 |
個人の研究活動紹介のホームページ
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