研究課題/領域番号 |
25350656
|
研究機関 | 志學館大学 |
研究代表者 |
飯干 紀代子 志學館大学, 人間関係学部, 教授 (80331156)
|
研究分担者 |
飯干 明 鹿児島大学, 教育学部, 教授 (20117477)
吉畑 博代 上智大学, 外国語学研究科, 教授 (20280208)
種村 純 川崎医療福祉大学, 医療技術学部, 教授 (90289207)
|
研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
キーワード | 認知症 / 非薬物療法 / 無作為比較試験 / コミュニケーション / 言語聴覚療法 / 自伝的記憶 / 回想法 / 集団介入 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は,認知症患者の自伝的記憶を聴取して作成するメモリーブック(Bourgeoisら,1990)を,①本邦の文化社会背景に合わせ,かつ,集団を対象とした言語・心理的介入方法として編成し,②多施設での無作為比較試験を実施して,③本人の認知・言語機能,行動障害,人生への肯定感を中心とした心理的変化,介護者の介護負担感への効果を検証することである. 対象は,鹿児島県,岡山県の5施設に入所・通所中のアルツハイマー型認知症患者57例で,介入群48例(平均年齢87.1±5.8歳,MMSE16.4±4.8点),非介入群9例(平均年齢88.1±3.7歳,MMSE14.8±3.6点)であった.介入群には約3か月間(週1回,1時間,全12セッション)のメモリーブックを用いた集団介入,非介入群には各施設で通常行われているデイサービスなどが実施された. 介入前後の神経心理検査の変化を2元配置分析で解析した結果,認知機能(MMSE),言語機能(情景画叙述,語流暢検査),記憶(自伝的記憶流暢性検査),意欲・態度(能動的態度評価)において,いずれも介入群に有意な変化を認めた(df=1,F=242.7,118.8,20.2,28.8,163.0,p<0.001).介護負担感は得点上の変化はなかったが,完成したメモリーブックを見たことによる患者理解の深まりや肯定的感情の生起を認めた. また,患者から得られた自伝的記憶の記述をKH corderでテキスト分析した結果,対象全体では,一般名詞,動詞,固有名詞(人名・地名),形容動詞,形容詞の順に多く,形容動詞や形容詞では,辛い・悲しいといった否定的な意味合いを持つ語よりも,嬉しい・幸せといった肯定的な語の割合が多かった.認知症の重症度別にみると、重症化に伴って語数が減少し,語と語の繋がり(共起ネットワーク)も疎になり断片的な記憶として表現される傾向が示されたが,認知症が重度であっても何らかの自伝的記憶は保存されていることも明らかになった.
|