運動後に生じる血圧低下のメカニズムについて、動脈血圧反射特性の観点から検討した。若年者を対象に1時間の自転車運動を行い、その前後で動脈血圧反射特性を調べた。動脈血圧反射特性は、頸部陰圧陽圧負荷装置を用いて、+40mmHg~-80mmHgの圧力を頸部に負荷した時の心拍、血圧応答を調べて評価した。心拍数は心電図を記録して算出し、血圧は指尖脈波を用いてbeat-by-beatで連続記録した。血圧と頸部に負荷した圧力から、頸動脈洞にある血圧受容器に加わる圧力を推定した(推定頸動脈洞圧)。+40mmHg~-80mmHgの圧力変化を頸部に加えたところ、圧力変化に応じた心拍、血圧応答がみられた。これら連続圧力負荷に対する心拍、血圧応答から、推定頸動脈洞圧-心拍応答曲線および推定頸動脈洞圧-血圧応答曲線を求めた。 1時間の自転車運動を行うと、運動前と比較して運動後に血圧が低下しない者と、運動後に血圧が低下する者がいた。運動後に血圧が低下する、低下しないにかかわらず、推定頸動脈洞圧-心拍応答曲線のゲインは変わらず、曲線が高心拍方向にシフトした。推定頸動脈洞圧-血圧応答曲線は、運動後に血圧が低下する場合には曲線はシフトせず、ゲインも変化しなかった。一方、運動後に血圧が低下する場合、動脈洞圧-血圧応答曲線のゲインは変わらないが、曲線が低血圧方向へシフトした。 以上の結果は、運動後の血圧低下メカニズムとして、動脈血圧反射の頸動脈洞―心拍数反射ではなく、頸動脈洞―血圧反射が関与することを示唆する。
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