研究課題/領域番号 |
25350661
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研究機関 | 独立行政法人国立病院機構徳島病院(臨床研究部) |
研究代表者 |
有井 敬治 独立行政法人国立病院機構徳島病院(臨床研究部), その他部局等, その他 (70644855)
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研究分担者 |
川村 和之 独立行政法人国立病院機構徳島病院(臨床研究部), その他部局等, その他 (10450959)
橋 逸郎 中部学院大学短期大学部, その他部局等, その他 (20649131)
三ツ井 貴夫 独立行政法人国立病院機構徳島病院(臨床研究部), その他部局等, その他 (80294726)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 太極拳 / パーキンソン病 / 姿勢異常 / セルフトッレーニング / DVD |
研究実績の概要 |
パーキンソン病は、特徴的な運動症状ならびに非運動症状を呈する緩徐進行性の神経変性疾患である。近年、種々の治療薬が開発されるに伴い、患者は前時代とは比較にならないほど生活の質が向上したといえる。しかしながら、抗パーキンソン病薬を服用する患者は、次第に様々な副作用に悩まされることになる。さらに運動症状である姿勢異常や平衡障害、ならびに多彩な非運動症状は依然として治療抵抗性である。他の神経難病、たとえば進行性核上性麻痺、皮質基底核変性症および多系統萎縮症においては、有効性が確立されている薬物さえ存在しない。我々は、長年にわたり神経難病の診療に携わる中で、薬物療法の限界を感じる機会が多くなとともに、リハビリテーションに大きな可能性を感じるようになった。 最近、太極拳がパーキンソン病の症状、特に姿勢の安定性を改善させることが報告され、多くの注目が集まっている。時期を同じくして、我々は試行錯誤を経てパーキンソン病のための独自の太極拳メニューを考案し、入院患者のリハビリテーションに取り入れている。本研究は、入院患者のみならず外来患者も自宅で容易にトレーニングできるようにするための太極拳DVDを作成すること、その長期にわたる効果を評価すること、ならびにパーキンソン病の治療抵抗性の症状に対する効果についても検証することが目的である。現在、パーキンソン病のための太極拳の方法は存在しない上に、自己学習できる教材も皆無である。このため、我々はNPO法人日本健康太極拳協会の全面的な支援を得て、セルフトレーニングに利用できる太極拳DVDを製作した。我々はパーキンソン病でリハビリテーション入院した患者に対し、インストラクターによる週一回、1時間の実習に加えて、この教材を用いたセルフトレーニングを実施して頂いている。そして、約一ヶ月間継続した時の効果を種々の指標で検討している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
セルフトレーニング用の太極拳DVDは以下の3部で構成される。 Part 1、ストレッチング・・ 姿勢維持筋(呼吸補助筋)を賦活する3種類の気功ストレッチ。1:托天按頂、2:左右托按、3:手抱崑崙 Part 2、パーキンソンタイチ・・体幹バランスを整え、運動機能を向上させる医療太極拳。1:パーキンソンタイチ1(初級編)、2:パーキンソンタイチ2(中級編) Part 3、タイチウオーク・・転倒防止と歩行機能改善に役立つ歩行訓練。1:タイチウオーク(太極拳歩行、前進)、2:サイドステップ(太極拳歩行、横歩き) 太極拳DVDは座位の運動を重視し、呼吸法を介した筋緊張の緩和を促進するメニュ-を強化している。そして、座位の運動を繰り返したうえで、個々の症状に応じて可能な場合には立位運動を追加する構成である。効果の判定は平成25年度から3年間にわたり、同一の基準で行う。評価は神経内科専門医、理学療法士(PT)、作業療法士(OT)および言語聴覚士(ST)がそれぞれ次のスケールを用いて実施する。神経内科医: UPDRS part 1-4。理学療法士、①歩行スピード、歩幅、歩数 ②筋力: 大腿四頭筋 ③重心動揺検査。作業療法士、①握力 ②STEF ③SDS ④IADL ⑤ADL(BI)。言語聴覚士(ST) ①FAB ②MMSE ③口唇運動 ④舌運動:突出、右、左 ⑤咬合力 ⑥両唇閉鎖力 ⑦嚥下、⑧発声。評価は入院前、入院後4週間、退院後3ヶ月・6ヶ月・1年・2年の時点で行う。平成25年度はDVDを用いて、パーキンソン病ならびに関連疾患の入院患者に対し、太極拳を実施し、入院期間(5W)における効果を判定した。DVDの有効性と安全性を検証することに主眼をおく。また平成26年度は前年度の研究に加えて、外来患者に対しても在宅太極拳実施の指導を行い、その効果を上記と同様の基準を用いて評価している。
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今後の研究の推進方策 |
我々が作成した太極拳DVDの基本は座って行うものである。これは転倒防止に繋がるばかりでなく、呼吸法の上からも非常に重要である。太極拳は呼吸と身体運動が密接に関連した協調運動であり、その結果、呼吸補助筋の機能が強化され、呼吸時の呼気相を延長し、筋緊張を緩和させることが知られている。また、呼吸補助筋は脊柱の安定化にも関与する筋でもあることから、その強化は姿勢の保持・安定化にも寄与するものと考えられる。そして、この呼吸補助筋のトレーニングは座位で行う方が、立位で行うよりはるかに効果的である。このため、太極拳DVDは座位の運動を重視し、呼吸法を介した筋緊張の緩和を促進するメニュ-を強化している。 平成25年度から開始された本研究はこれまで、DVDを用いて、パーキンソン病ならびに関連疾患の入院患者に対し、太極拳を実施し、入院期間(5W)における効果を判定した。入院期間中に在宅での太極拳実施に向けた指導を行う。初年度はDVDの有効性と安全性を検証することに主眼をおくものであった。平成26年度は前年度の研究に加えて、外来患者に対しても在宅太極拳実施の指導を行った。これまで、得られた成績では、パーキンソン病の重症度のスケールであるUPDRSは、太極拳併用群で明らかに有意な改善が認められている。平成27年度は在宅太極拳の開始後、1年・2年後の効果を対照群と比較することで長期効果を検証する。自立度の高い患者を対象にした上級編のパーキンソン病太極拳DVDを製作し、その有用性を同様の方法で検討することを予定している。
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次年度使用額が生じた理由 |
事務処理の問題で9万円ほど繰越となったものの、研究はほぼ順調に進んでいる。
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次年度使用額の使用計画 |
平成27年は最終年度であり、研究の完成に向けて努力する。本年度中にDVDの作成も予定している。
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