前年度までに開発を進めてきた他者との歩行運動の相互作用によって障がい者の歩容改善を目的とした歩行訓練装置を用いた評価実験を進めるとともに,健康な高齢者を対象とした,歩行中の姿勢評価手法の提案を行った. 具体的には,昨年度までに構築した,歩行中の上下肢及び,体幹の動きを,安価なモーションキャプチャにより計測し,リアルタイムで自身の歩行運動と模範となる歩行運動の違いを視覚的に提示する形式の歩行訓練装置を用いた,様々な歩容計測と,それを歩容の補正訓練への適用を行った.なお,同装置には,他者との相互作用といった観点から,CGの人体モデルとして被験者の歩行運動をバイオロジカルモーションとしてリアルタイムで提示される機能が実装されている. その結果, CG映像により提示される人体モデルの歩行運動に合わせる形式の訓練を行うことで,27年度までに確認された,下肢の軌道の安定化,歩容の軌道が自由歩行時の軌道に近い位置に遷移する歩容改善に加え,装具による拘束をしていない様々な歩行運動に対しても下肢の動きに変化がみられ,その歩容の印象に変化がみられることが示された. また,それと併せて高齢者を対象とした歩容を計測する実験も行い,高齢者の歩行中の姿勢を計測し,それを健康状態の評価指標として役立てるための活用手法の提案も行った. 以上の結果より,本研究が目的とする歩容改善手法に関し,提案する歩行訓練手法が高齢者も含めた様々な人の健康維持に役立てられる可能性が示唆された.
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