研究課題/領域番号 |
25350681
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研究機関 | 東京電機大学 |
研究代表者 |
大西 謙吾 東京電機大学, 理工学部, 准教授 (70336254)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 義肢 / ソケット / 温熱特性 / 生体信号計測 / 義手 |
研究実績の概要 |
本研究は,義手ソケットと切断肢の温熱特性を調査,体系化することで,切断肢の不快感の低減,周囲温度・湿度の変化に知脚手も切断肢体温を安定化できる筋電義手用ソケットを提案することを目的とする.上肢切断者の筋電義手の使用率の低さの原因として装着の不快感と制御系の応答の不安定さがある.この解決に向け,ソケット内の切断肢の冷えや蒸れといった感覚の機序を,切断肢の体表面を樹脂等で密着・密封した状態での体表面の伝熱特性や血流などの生理反応を測定することであきらかにする.体温調整メカニズムを有し,切断肢の体内組織構造にもとづく伝熱特性モデルにより作成した試験機でソケットの比較試験機を作成し,実験を通じて体系的により好まし義手ソケットの設計・製作・評価方法について検討する. 今年度は,引き続き非切断者を対象とした実験を実施し,制御された周囲環境温度・湿度の状況下で,異なる周囲温度でソケット装着時におけるソケット内体表面温度・湿度と未装着時体表面温度を測定し,比較した.また,筋活動の有無とソケット装着の有無の組み合わせで,上肢静脈流速変化,ソケット内体表面接触圧との関係を実験調査した.さらに,前腕の体温調整機能を有する等価発熱モデルをもとにヒータと調温器,ソケット内温度測定用IC温度センサ,ソケット表面温度測定用サーモグラフィからなる試験機を試作し,ソケットの設計パラメータによる効果を検証する実験装置を構築した.試験機は,熱伝達率が既報論文であきらかな樹脂を用いて検証実験を行い,類似する熱伝達率が得られたことから,試験機として十分な性能があることを確認した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
申請時当初の計画では2年目は切断者を対象にソケット装着での各種測定実験を実施することとしていた.しかし,昨年度の実験結果を共同研究者の義肢装具士と議論し,切断者のデータを評価するには,基準となる非切断者の体系的なデータが必要であるとの結論にいたり,今年度は複数の非切断者での体系的な実験を行い,基準となるデータを蓄積することとした.なお,当初は温度と湿度をそれぞれ体系的に組み合わせ実験を実施する計画としたが,設備の都合で,計画の50%しか実施できず,残りの実験は次年度繰越とした.また,ソケット装着と筋活動との関係で実験条件を設定し,生理反応測定実験を実施して分析も行った.ソケットの設計パラメータによる効果を検証する実験装置は測定環境を整備し,実験条件を定めるための実験を繰り返し行ったことから,当初予定よりも若干の遅れがあった.
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今後の研究の推進方策 |
複数の非切断者での体系的な実験を行い,基準となるデータの継続蓄積を進める.昨年度残った温度と湿度を体系的に組み合わせた実験条件を実施する.また,生理反応測定実験は,センサを追加し,測定部位も加味し,より多様な条件下での測定と比較分析を行う.ソケットの設計パラメータを選定し,直交表実験の計画を行い,パラメータの効果を実験・分析により考察する.
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次年度使用額が生じた理由 |
予定していた国際会議(MEC2014, Canada, New Brunswick)への参加を行わなかったため外国旅費を未執行となった.
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次年度使用額の使用計画 |
国際会議(ISPO2015, France, Lyon)への参加と講演発表が採択されているので,その外国旅費,参加登録(成果投稿費用)へ割り当てる.
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