本研究は,義手ソケットと切断肢の温熱特性を調査,体系化することで,切断肢の不快感の低減,周囲温度・湿度の変化に知脚手も切断肢体温を安定化できる筋電義手用ソケットを提案することを目的とする.上肢切断者の筋電義手の使用率の低さの原因として装着の不快感と制御系の応答の不安定さがある.この解決に向け,ソケット内の切断肢の冷えや蒸れといった感覚の機序を,切断肢の体表面を樹脂等で密着・密封した状態での体表面の伝熱特性や血流などの生理反応を測定することであきらかにする.体温調整メカニズムを有し,切断肢の体内組織構造にもとづく伝熱特性モデルにより作成した試験機でソケットの比較試験機を作成し,実験を通じて体系的により好まし義手ソケットの設計・製作・評価方法について検討する. 今年度は,引き続き健常者を対象とした実験を実施し,制御された周囲環境温度・湿度の状況下で,異なる周囲湿度でソケット装着時におけるソケット内体表面温度・湿度と未装着時体表面温度を測定し,比較した.そして,下肢の活動がある場合の上肢ソケット内体表面温度・湿度の変動を測定し,考察を行った.また,筋活動レベルとソケット装着の有無の組み合わせで,上肢静脈流速変化,肘窩皮膚血流量,ソケット内体表面接触圧,体表面温度との関係を実験調査した.さらに,前腕の体温調整機能を有する等価発熱モデルとしてヒータと調温器,ソケット内外温度測定用IC温度センサ,ソケット表面温度測定用サーモグラフィからなる試験機を用い,ソケットの設計パラメータとしてソケット材質,厚み,通気孔の有無,ソケット内の隙間の大きさの効果を検証する実験を行った.
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