研究課題/領域番号 |
25350690
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 大阪電気通信大学 |
研究代表者 |
松村 雅史 大阪電気通信大学, 医療福祉工学部, 教授 (80209618)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 介護予防・支援技術 / スマートバイオセンサ / 心電図 / 血圧変動 / 脈波伝搬時間 / 口腔機能 / 嚥下 |
研究概要 |
本研究では、首もとに生体用電極、マイクロホン、光・3軸加速度・温度センサを一体化させたネックバンド型スマートバイオセンサを開発し、心電図・心拍、口腔音、血圧、運動、体温を無拘束・無意識計測する。本年度の研究成果を以下に示す。 1)ネックバンド型スマートバイオセンサの開発:首もとにフィットするアームにバイタルサインセンサ(心電図、脈波、血中酸素飽和濃度)と口腔機能センサ、3軸加速度センサを集積化して組み込んだネックバンド型スマートバイオセンサを開発する。心電図モニタリング電極はペースト不要のアクティブ電極とし、さらに皮膚との接触圧が均一となるように電極形状を3Dプリンタで設計した。その結果、SN比が15.2dBで皿電極に比べて1.3dB向上し、接触圧の集中による違和感を低減させることができた。 2)循環器系(心拍数、血圧変動)の無拘束センシング:血液中の酸素濃度により光学的特性が変化することを利用し、頸部の皮膚表面の反射光から光電脈波と血液中の酸素飽和濃度を計測した。この発光・受光センサを集積化し、ネックバンド型スマートバイオセンサに一体化させ、心電図と光電脈波(660nm)から脈波伝搬時間を求めるシステムを開発した。本システムでは10秒間隔で計測可能であり、カフを用いる従来法より時間分解能が高く、透析中に発生した血圧の急変を検出することができた。 3)口腔機能(会話、笑いの頻度、嚥下、誤嚥、呼吸音)の無拘束センシング:首もとの皮膚表面から検出される口腔咽喉音には、呼吸音、音声、摂食・嚥下に関わる音情報が含まれている。それらの音波形の振幅包絡線と周波数成分(ケプストラム分析)の特徴を併用して識別することに成功した。また、老人介護施設の協力を得て笑いと口腔機能に関する実証実験を行い、笑いのポジティブ介入により高齢者の嚥下回数が増加し、口腔機能が向上することを示唆する結果が得られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の概要は以下のとおりである。 1)バイタルサインセンサ、口腔機能センサ、温度センサ、3軸加速度センサを組込んだネックバンド型スマートバイオセンサを開発する。 2)バイオセンサ情報を融合させることで高齢者の行動、食事、会話、笑いを識別し、長期間のライフレコードから生活リズムを分析すると共に体調変化やストレスを検出し、医療機関から適切なアドバイスが受けられる体調管理システムを開発する。 平成25年度はネックバンド型スマートバイオセンサを開発することを主題としており、心電図モニタリングのSN比向上、心電図と光電脈波の情報に基づく脈波伝搬時間のモニタリング、口腔咽喉音のケプストラム分析による有声音・無声音の識別が実現させることができた。また、太陽電池駆動させる電源システムについてもシステム全体の消費電力が推定でき次第、施策を行う予定である。 以上の点から本研究は当初の計画通り、おおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
従来の生体情報計測は、心電図など個別に研究が行われ、最近ではこれらのセンサに無線通信機能を付加して新規性を提示しているが、長時間、電極を張り付けることでかゆみやかぶれが生じるという根本的な問題が解決されず、日常生活での長時間計測に耐えうるものは実現されていない。さらに、長期間の生体情報モニタリングで得られたビッグデータの分析に基づくエビデンスも求められている。 本研究は順調に進んでおり、今後の研究推進方策は、ネックバンド型スマートバイオセンサを用いて生体情報の長期間計測と生活リズムの分析へと展開させる。長期間の使用に耐えるようにセンサデバイスは集積化させることが必要であり試作を企業に依頼する。また、ネックバンドの皮膚との接触圧分布を均一化させる3次元形状を設計し3Dプリンタで試作を行う。 このようなシステム作りを経て、個人の長期間の生体情報モニタリングを行い、これらの生体情報の融合処理を試行する。血圧・心拍数、会話や笑いの頻度、食事の時間や誤嚥、寝床からの起き上り、歩行などを検出して日常生活動作のパターンモデルを作成する。また、心電図R-R間隔から心拍数と自律神経活動を推定してストレス低減度に関する分析を行う。このような生体情報から毎時間ごとに動作認識を行い、会話、誤嚥や咳嗽、食事、歩行、睡眠などの識別に基づき生活リズムの分析を行う。さらに笑いのポジティブ介入により高齢者の口腔機能を向上できるかどうかを検証する実験を老人介護施設の協力を得て実施する予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
物品費:購入予定のノートパソコンVAIOが生産完了となり、別の機種に変更することになった。OSがwindows8からwindows8.1にアップグレードされ、これまで開発した計測用ソフト、信号処理ソフトが移動できるかどうかを検証する必要がある。このため平成25年度に購入を平成26年度に持ち越す結果となった。 旅費:平成25年度は旅費を計上していたが、研究成果を発表する学会申込期日の関係から平成26年度に発表することになった。この予算も平成26年度に漆器う予定である。 物品費ならびに旅費で、平成26年度使用額が生じたが、研究は計画通り順調に進んでおり、研究計画に変更はありません。毎年、ノートパソコンの新製品は提供されるので、できる限り新しい機種で研究成果を上げることとする。 平成25年度から平成26年度に繰り越した予算は同品目で執行予定である。平成25年度に予定していた最新のOSを搭載したノートパソコンを平成26年度に購入する。また、研究成果の発表、調査のための旅費も平成26年度に執行する予定である。 平成25年度から平成26年度に予算を繰り越したが、当初の研究計画通りに実施する。
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