【今年度の研究目的】 本研究の目的は、「いつの間にか」動いているダンス授業の検討を通して、「表現すること」を再考し、新たなダンス学習内容の一面を明らかにするものである。今年度はそのまとめを行った。 【研究実績の概要】 今年度は、これまでの実践と理論をまとめ、「いつの間にか」踊れるダンス学習のモデルを提案することが実施計画であった。いつの間にか「表現すること」を再考した結果、身体表現には意識して表現している時と、無意識のまま表現している時があると考えられた。多くの場合、表現することは意識的に行われ、自分で制御できると考えがちである。しかし、自分が意識していないことも身体に現れ出てしまうことがある。ダンス学習では、これまで学習者の意識で制御するような学習内容をプログラムしてきた傾向にある。しかし、優れた指導者は学習を通じて学習者自身も気づいていなかった自ら出でる表現を体現させていた。学習者は、学習を通して、無意識(無自覚)から意識的(自覚時)へ変容しながら動けるようになる。これは、佐伯胖が人は「わからない」状態から「わかる」状態へむけて絶えず活動しつづけている(佐伯、1984)と述べる状態と同様であると考えられる。また、そのためには授業の有り様が大切であることが改めて確認された。すなわち、齊藤喜博が「よい授業には、すぐれた芸術作品と同じような、緊張と集中がある」(齊藤、1960)と述べるような授業の展開が、学びの質を高めるダンス学習に重要であることがわかった。
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