研究課題/領域番号 |
25350721
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
研究機関 | 静岡大学 |
研究代表者 |
新保 淳 静岡大学, 教育学部, 教授 (30187570)
|
研究分担者 |
樋口 聡 広島大学, 教育学研究科(研究院), 教授 (30173157)
高根 信吾 常葉大学, 保育学部, 講師 (70440609)
|
研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
キーワード | 授業実践力 / 熟達化 / リフレクションシート / 実技授業特有の「場」 / 利便性 |
研究概要 |
本研究は、校内研修などのような「特別に設定された研修の場」と、一方で、時間的確保が困難な日常の個々の教員における授業実践とのそれらの中間に位置づけられる、「少数の教員集団による自己研修の場」において活用しうる利便性が高いリフレクションシートの開発を試みることを目的とするものである。またそれによって、「省察」を中核とした「授業実践」力の向上を目標にした実践を行うために、このシートとそれを利用することの効果についての検証を試みるものである。 中でも保健体育科における教員が、自らの授業実践力を熟達化していくためのシステムを開発し検証するために、本年度は、まず、「省察」の可視化を具体化する「リフレクションシート」のプロトタイプを作成することから開始した。鹿毛の「しかけ論」から導き出した「リフレクションシート」の記入原則を視点とし、さらには過去にWeb上にデータベース化された実技の授業映像をもとに、利便性の高いリフレクションシートのプロトタイプ作成を目指した。そうした中で、体育の実技授業特有のグループ編成や練習場所、それらの活用順序等々をどのように用いるかという「場」の利用についてのリフレクションもまた加える必要があることが確認された。 その成果は、研究分担者と「『学び続ける教員像』確立のために求められるリフレクションに関する研究(1)」(常葉大学保育学部紀要、第1号、pp.95-107、2014)に発表した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
第一に、研究協力者の協力によって、小学校の体育科教育実践フィールドにおいて、ビデオ撮影や半構造化インタビューを実施した。それによって、体育の実技授業特有のグループ編成や練習場所、それらの活用順序等々をどのように用いるかといった「場」の利用についても考慮された利便可能性の高いリフレクションシートのプロトタイプを作成することができた。 第二に、研究協力者の協力によって、リフレクションシート活用のための体育科における「年間指導計画の見直し」を行った。具体的には、「学年団(低学年・中学年・高学年)ごとの指導マニュアル作成」という提案がなされたことである。この提案は、クラス(学年)間で共有できる教場・教具の工夫や「2クラス2Teacher」といった授業運営を設定することによって、よりリフレクションをしやすい環境整備を目指すものでもあり、そうした状況において、次年度にはリフレクションシートの活用が期待されると考えられる。
|
今後の研究の推進方策 |
特に今年度は、米国において教員養成機関を持つ大学を訪問し、Ed.D.の学位を持った教員が教育実践を行う学生に対して、どのような手法を用いて学習支援しているのかについてインタビュー調査を行う。 さらに今後は、「少数の教員集団による自己研修の場」というリフレクションシートの利用状況を設定した上で、体育の授業を実施する教員が、利便性が高いリフレクションシートを実際に活用することによって、授業のPDCAサイクルにおけるシートの利用およびそれを活用することの効果について検証することである。そのためには、ある程度の試行期間を準備するとともに、利用および活用の実際化へと至るまでの課題等についても、それぞれの段階段階において観察と情報の収集が必要になると考えられる。またここで用いるリフレクションシートは、単純に次の時間へのPDCAサイクルに組み込むためのツールとしてのみ用いられるというよりも、次の単元や次年度に向けた年間計画そのものへと活用することを前提にされるべきであろう。というのも、同様の単元内容等において授業を実践するのは、次年度の別の子どもを対象とするというサイクルが、教育現場において通常だからである。こうした点も視野に入れて検討していくことが求められるであろう。
|
次年度の研究費の使用計画 |
研究分担者において病気療養が必要となり、海外におけるリフレクションシートの収集等が実施できなかったため。 平成26年度は、当該研究分担者が、再度、海外におけるリフレクションシートの収集等を実施する予定である。
|