体育授業における動機づけに及ぼす動機づけ方略の効果に関する実践的研究に関する平成26年度の主な研究業績は、以下の通りである。 まず、体育教師が日常の授業場面で用いる多面的な働きかけ(本研究では、これを動機づけ方略と呼ぶ)が児童・生徒の動機づけに及ぼす影響に関する文献を中心に収集し、現状の把握と理論的枠組みの検討を試みた結果、現在の代表的な動機づけ理論である達成目標理論と自己決定理論が有望であることを明らかにした。このうち、達成目標理論では、教師が努力を重視した課題関与的な動機づけ雰囲気を作り出しているのか、それとも能力を重視した自我関与的雰囲気を作り出しているのかが動機づけに重要であること、また、自己決定理論では、児童・生徒の3つの基本的心理欲求、すなわち、有能さ、自律性、関係性への欲求を充足させるうえで、教師がどのような自律性支援的行動(①構造、②自律性支援(狭義)、③関与)を行っているかが重要であることを指摘するとともに、今後、動機づけ方略に焦点を当てた検討を行う場合、これらの理論を個別に検討するのではなく、統合的理解の必要性を論じた。 また、従来の研究のほとんどが、動機づけに関する個々の変数を基礎にした分析(variable-based approach)であることから、教員個人の影響を検討する個人単位(person-based approach)の分析の必要性を指摘した。
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