最終年度である28年度は、まず、小学5・6年生の体育授業場面を対象とした調査研究において、構造、自律性支援、関与からなる教師行動が学習動機を経由して動機づけに影響しているかどうかを検討した。その結果、“児童に声をかけ,できたときにはほめ,選択の機会を与える”ような「一般的学習支援」と“うまくできるように教える,わかりやすく教える”という「有能さ支援」が“少しむずかしくても,面白い運動をしたい”という「充実志向」や“できないところを教えあって,みんなができるようになりたい”という「集団志向」を通して動機づけを高めることが共分散構造分析によって認められ、児童の動機づけに及ぼす教師行動の重要性が自己決定理論の立場から確認できた(本研究成果は、学会発表1で公表し、既に日本体育科教育学会が発行する「体育科教育学研究」に受理されている)。 つぎに、生徒の心理欲求(自律性、有能さ、関係性)を充足させるための教師の意図的な働きかけが生徒の動機づけを高めるかどうかを、中学生の器械運動(マット運動:10時間)を対象とした実践的な研究で検討した。その結果、生徒は教師からの働きかけによって、教師に対する関係性への欲求と有能さへの欲求を充足することを通して、マット運動に対する内発的動機づけを向上させることを明らかにし、生徒の心理欲求の充足を目的とした働きかけが有効であることを実証した(本研究成果は研究発表2において公表した)。 以上のことから、これら心理欲求の充足に向けた教師の働きかけが体育授業場面で用いる教師の動機づけ方略の1つとして重要であることを示唆するものであることから、今後の体育授業における動機づけの向上の可能性にさらなる展開が期待できるものと考えられた。
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